「大人のためのSF」メッセージ mittyさんの映画レビュー(感想・評価)
大人のためのSF
宇宙人とのファーストコンタクトというテーマを考えると、抑え気味の映像美、派手さのない展開で、見る人を選ぶ映画かもしれません。地球襲来にやってきたエイリアンをレーザー光線銃でやっつけるという、アクション満載、エンタメたっぷり、ビジュアル重視のSFを想像していたら、退屈してしまうかもしれません。静かな雰囲気を楽しみながら、哲学的にも深く心を傾ける、大人のためのSFかもしれません。
自分はといえば、主人公の言語学者ルイーズが異星人ヘポタポッドに、“HUMAN”と書いた紙を見せて交流を試みるという、原始的でアナログ的な交信からして、どきどきしておりました。ヘポタポッドが触手から出す、墨で書いたような丸い文字の解析ですが、言語学者といえども、どうやって紐解いて行ったのか?? 墨文字は神秘的。一つの輪っかにたくさんの情報が集積されているのだから、文字ではなく、もはや、文章表現といってもいいかもしれません。
幼くして娘が亡くなり、娘との日々がフラッシュバックのように何度も出てくるシーン。誰もが過去の悲しいシーンが主人公の頭をよぎっているのだと思わされるのですが、ラストを見て、なるほど〜と納得。
ヘポタポッドには、人類のように、「時間」の概念がなく、過去・現在・未来と、どこでもアクセスできるらしい。ヘポタポッドの言語を解釈したルイーズにも、時間という常識的な縛り(?)が無くなったらしい。これって、普通に考えると、とても苦しいことで、感覚的には理解できませんでした。幼くして娘が亡くなってしまうという悲しい未来がわかっていようとも、その不条理を受け入れる勇気というか、定め。時間というものがないのだから、すべて、ストーリーは決まっていて、必然なのか? 理屈では理解できても、心情的には苦しくなりますが、「この瞬間、何が起きるかわかっていても、どの瞬間も大切にするわ」というルイーズの言葉は宗教的でもあると感じました。
それにしても、人民解放軍のシャン上将が武装解除すると発表するに至った、ルイーズがシャンに電話で告げたことって何だったんでしょうね。
それと、娘が母に問いかけるところ。
「競争なんだけど、両者が納得できるということ」
「妥協」でもなく、「ウィン・ウィン」でもないとしたら?
自分にとっては、予想を超えた、いい映画でした。まだ一回しか見てないので、再度見たら、新たな発見があるかも。
Mさん、コメントありがとうございます! 亀レスですみません。Mさんの『メッセージ』レビューが見つけられませんでした。時間の概念がないという感覚が未だ実感できませんが、心の扉が広がる感じでしょうか。
『大豆田とわ子と三人の元夫』、今度見ます。
時間の概念がなくなるというのは、私にとってはとても優しい映画でした。
ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」の主人公とオダギリジョーのやり取りを思い出します。(見たのはこちらの作品(「メッセージ」)の方が先でしたが)
もしかすると、大切なものをなくしたことがある人ほど、この映画を優しいと感じるのかもしれません。
この映画を好きというmitty さんも大切なものをなくされたことがあるのでしょうか。それともラストを見て納得されたということは(幸いなことに)まだそのような経験はないということでしょうか。
いずれにしろ、この作品を好きだと言われるmittyさんの優しさを感じることができるレビューでした。