「「言葉」は武器、「輪」は繋がり」メッセージ さうすぽー。さんの映画レビュー(感想・評価)
「言葉」は武器、「輪」は繋がり
自分はSFも好きですし、人間ドラマも好きです。
その好きな2つの要素を見事に融合させてくれた作品。
宇宙船が突然地球に来る設定はかなり王道で数多いですが、「インデペンデンスデイ」や「第9地区」のようなスリラー映画ではなく、「エイリアンが何のために地球に来たか」を解き明かす物語。
そういった物語はありそうで無かったので、初めて観たときは新鮮でした。
スリラー映画では無いものの、ヘプタポットと名付けられたエイリアンとの交信シーンは緊張感があります。
普通、得体の知れない生物を前にしたら誰もが怖いと感じると思います。
もちろん自分もそうです。
それを、俳優の演技や音楽で感じとれて映画の世界に入ったような映像体験をさせられます。
そして、徐々にヘプタポットとやり取りが進んでいきますが、その様も本当に面白いです!
特に初めてヘプタポットの「文字」が現れた時は、SF好きである僕としては非常にワクワクドキドキです!
その「文字」についてですが、
人間のように横に並べるわけではなく、輪を形成するように並べられるのですが、よくこんなアイデアを思い付いたと感心させられます。
「輪」である理由についてもちゃんと理由付けがされていて、あらゆる概念やヘプタポット自身の感覚に基づいているものであるので、非常にリアルです。
「輪」というのは繋がりだと思うんです。
最初と最後の文字が繋がるだけでなく、ヘプタポットと人間の交信することで生まれる繋がり、そこで起こる人と人との繋がり、過去と未来が一つになる繋がり
この映画はある種色々な「繋がり」で出来ている内容であるのかも知れません。
また、ヘプタポットの鳴き声も独特ですが、低音で鳴くので現実の生き物のように感じます。
そうした設定もあってか、まるで本物の宇宙人とやり取りを本当に人間がしているかのような、一種のドキュメンタリーを観ているようにも感じます。
フィクションという感覚を何度も忘れさせられました!
そして前述でも書いた通り、この映画は言語学者ルイーズの内面や、その周りのやり取りを描くヒューマンドラマでもあります。
また、この映画の原作小説の名前は「あなたの人生の物語」です。
宇宙人とやり取りを交わすSF作品でありながら、人生について考えさせられる作品です。
僕は、アニメ映画「さよならの朝に約束の花をかざろう(以下、さよ朝)」を観たときに、あるテーマがこの映画と非常に似ている事に気が付きました。
それは「自分の人生を受け入れること」です。
「さよ朝」はこれまでの人生を主人公が受け入れる物語ですが、
「メッセージ」はこれから先の人生をルイーズが受け入れる物語です。
その人生がどんなに辛いものであろうと、それを肯定的に受け入れられる事こそが"幸せ"の一つなんだとこの2つの作品から教わった気がします。
そして、この映画にはある種「世界平和」への願いも込められていると思います。
この映画での結末を現実でもやろうとすると非常に難しいとは思いますが、そうなったら良いなと思わせてくれます。
"言葉"は武器です。
伊藤計劃の小説「虐殺器官」では"言葉"が世界を滅ぼす武器として描いてましたが、メッセージは真逆です。
「人と人が繋がり合う」武器にもなるのだと再確認させられました。
以上のように、この映画には様々な"メッセージ"が込められています。
何年先もこの映画とその"メッセージ"を大切にしていきたいです。