「人類にとっての「武器」とは何か? 世界友好のメッセージ。」メッセージ 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
人類にとっての「武器」とは何か? 世界友好のメッセージ。
最近は、SF映画も人間ドラマに重厚感があって面白い作品が多い。現実がかつて映画で描いた「近未来」に接近しつつあるから、サイエンス・フィクションの世界にもリアリズムが成立するし、必ずしも別世界の話ではないような感覚になる。地球の各国に未確認物体が突如現れたことから起こるSFのストーリーも、物語の静謐さとリアリズムから、SFというよりも重厚な人間ドラマを見ているような気分だった。もちろん、ヴィジュアルの美しさにも魅了されながら。
言語学者エイミー・アダムスらチームが、謎の生命体と意志疎通を図るため、お互いの言語をすり合わせてコミュニケーションを取ろうとしていく物語の中で、回想だと思われた断片的な娘とのシーンの真相が明らかになり、映画が多面的になる。(ネタバレだが)「未来が見える」という設定を用いることはSFにおいて若干反則技というか禁じ手のような気がしないでもないが、この映画の場合はその設定をラブストーリーに効果的に活かして物語をエモーショナルにする。結末の見えた愛のページを捲るのか否かのドラマに、あぁやっぱりこの映画は紛れもなく「人間」の物語だと感じられて嬉しかった。
この映画は世界平和、ないし、反戦のメッセージを訴えかけている。我々人間には「言語」という優れたコミュニケーションツールがある。「言語」によって理解し合い、お互いを知ることが出来る。それが我々人間にとっての大いなる「武器」なのだということを、映画の最後に気づかされる。
この映画のストーリーは、クライマックスで「武力行使を止め、世界で協力し合う」という結論を下す。「人類を救いに来た」というその謎の生命体が何を言わんとしているか、この映画が何を言わんとしているか、克明にされる瞬間だった。アメリカと北朝鮮の間の緊張状態の狭間に置かれた日本という国で、憲法第9条の改正案について論じられている日本という国で、今、この映画を観た。
日本語で「武器」という言葉には、「Weapon」の意味の他に、「他より優れた特性」という意味もある。我々人間にとっての一番の武器(優れた特性)は「武力」ではなく、「言語」と「コミュニケーション」だというメッセージが、自然と腑に落ちる映画だった。