「私的な映画」メッセージ ぱんちょさんの映画レビュー(感想・評価)
私的な映画
美しく、静かで、詩的で、私的なSF映画。
一般的にはなかなか難しいが、SF映画としては必見。
『インターステラー」がゴリゴリに理系なSFだったとするならば、こちらは徹底的に文系のSF。
コレが私的な映画であることは原作のタイトル(「あなたの人生の物語」)からも分かるんだが、映画では最後に明らかにされて、それが分かると今までの場面の意味がまるで変わってくる。出来れば2回観て、その味わいを確認すべき。
以下ネタバレ。
言語学を専攻した立場から言えば、身につける言語によって世界認識が変わってくるのは当然だし。場合によっては能力が変わるということもありうると考えられる。
雪を表す言葉が20種類以上あるエスキモーには、それらが区別できるだけでなく、異なって見えるのだと言われる。また、主語の省略を許さない言語圏で唯一神の宗教が圧倒的なのは、その語法がなんらかの神の存在を想定させるから、とも考えられる。
この映画のように時制を持たない言語を身につけることで時間を超えた認識力を身につけるというのは、論理的にはあり得る。
映画に登場する彼らの文字を円環で表したのはそこをとても良く表現している。
だから、彼らの宇宙船は黒いばかうけなんかではない。あれは円環をなすモノリスなんだ。
この映画はそういうところがとても良く考えられていて、ヘプタポッドというイカ型宇宙人は完全に『宇宙戦争』(トライポッド・イカ型宇宙人)へのオマージュだよね。
お褒めいただきありがとうございます。
「円環をなすモノリス」のくだりももう少し書いておけば良かったと思っています。
つまり、『2001年宇宙の旅』におけるモノリスは「道具=武器」を与えることで人類が次のステージへ進むことを助けた訳ですが、ヘプタポッドは言語という道具を与えて更に次のステージへの進化を促しているのですね。彼らの目的を「武器を与える」と誤解したのはそういう意味で、彼らはまさに「道具=言葉を与える」と言っていたのだろうなと。そういう意味で彼らの宇宙船はモノリス的なものだったはずだろうと思うわけです。
初めまして!!
とても、共感できたのでコメントを残させてください。
おっしゃる通りだと思いました。
「言語」を理解することで、能力が変わるというのはまさしくです。
でも、そこを根底から理解するには、言語学を専行された方や、感覚的に(例えば霊感なども含めて)感じられる人だけなのかもしれないので・・よく理解できない会話のシーンと感じた人は、そこで眠気が来たのかもしれません。 私は、むしろそこのシーンが一番楽しくて、脳が喜んでる感覚を味わう事が出来ましたので
感動もしましたが、脳にも心地いい刺激を感じられた近年にしては珍しい作品だと思いました。
それを、わかりやすくレヴューにしていただいたので逆に感謝です。