「残酷な天使の花たち」暗黒女子 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
残酷な天使の花たち
突然引退した清水富美加主演のミステリーってぐらいにしか気に留めてなかったけど、原作はいわゆる“イヤミス”で内容もなかなか面白そう、ちょうど今日休みで1日の映画サービスデーだし、若くて可愛い女優たちも沢山見れる事だし(←多分一番の理由(^^;)、ちょっくら観に行ってみた。
同じく内容に惹かれたイヤミスの映画化では昨年の「少女」も急遽観に行く事に決めたが、スバリ、あちらより衝撃度は上。後味悪いもの見たいなら、「少女」よりオススメ。
これから若い女優たちの演技力や映画そのものへの手厳しい意見もどんどん出てきそうだが、何の何の、思ってた以上に面白かった。
お嬢様たちが通うカトリック女学院。
経営者の娘で全生徒の憧れの的、いつみの謎の転落死。すずらんの花を握りしめて。
部長として所属していた文学サークルの誰かによって殺されたという噂が流れ出す。
いつみの親友で副部長・小百合は、部員それぞれいつみの死をテーマにした物語を朗読する定例会を開く…。
部員たちはいつみへの敬愛を示すと共に、あくまで“物語”としていつみは部員の誰かに苦しめられていたと指摘。
特待生の美礼。家は貧乏で学園で浮いている自分を気にかけてくれるいつみを慕うようになり、いつみの父と妙に親密な志夜の存在に悩まされている事を知らされる。
老舗の料亭の娘あかね。得意なスイーツ作りを買われサークルに入り、妹の家庭教師のバイトを紹介した美礼が盗みをしている悩みを聞かされる。
ブルガリア人留学生のディアナ。いつみがブルガリア滞在中に仲良くなり、衰弱していくいつみの原因はあかねがスイーツに仕込んだ毒のせいと疑う。
高校生でありながら新人賞に輝くプロの作家でもある志夜。その才能からサークルに誘われ、怪しい留学生のディアナが呪いでいつみを苦しめている場を目撃する。
物語か、それとも真実の告白か。
「羅生門」ばりに一人一人言ってる事が食い違う。
お洒落で穏やかだった文学サークルの部室が、さながらぐちゃぐちゃごちゃごちゃした闇鍋のような空間に。
トリを飾る朗読は、小百合。
が、彼女の物語は意表を突いたもので、いつみの素顔と死の真相が明かされる…。
清水富美加、飯豊まりえ、清野菜名、玉城ティナ、小島梨里杏、平祐奈。
咲き揃った6輪の花たち。
が、可愛らしい花には秘密と毒がある…。
控え目でおしとやかながら、ヒヤリとさせる面を覗かせる。清水富美加には本当に女優を続けてほしかった。
太陽のように輝き、美しく、完璧。が、太陽の輝きは時に目を突き刺す。飯豊まりえの美貌とゾクッとさせる存在。
4人もそれぞれ、無邪気で魅力的である傍ら、ドス黒い腹の内を見せる。
もう一つ言及しておきたいのは、闇鍋。期待していた分肩透かしを食らった「ミュージアム」の“アレ”に対しリベンジしてくれた。
正直、真犯人は何となく予想付くし、サスペンスやミステリーとしての醍醐味や伏線などもちと弱い点も。
話題になっている“驚愕のラスト24分”には引き込まれるが、本作はそれ以上に、可憐な花園で蠢く人間模様こそ見もの。
女学院。そこは、女子たちだけの楽園。
皆が皆、清く、正しく、美しく…は、単なる無想かもしれない。
若く美しい花々のなかで、主役は私。周りは皆、自分を引き立てる為の脇役。
女学院。そこは…
主従、妬み、愛憎、裏切り、落胆…。
知ってはいけない女子たちだけの残酷な世界。