「三船氏という俳優の魅力を監督なりに探ったドキュメンタリー。」MIFUNE: THE LAST SAMURAI とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
三船氏という俳優の魅力を監督なりに探ったドキュメンタリー。
にわかファンが、制作秘話とかのエピソードを期待して、鑑賞したら、違った…。
もっとお堅いものだった(笑)。
まじめに、真摯に研究している。まるで卒論。
その中で、三船氏のイメージを壊さないものだけを編集したのかな?
そのリスペクトぶりが、物足りないような、うれしいような。
三船氏のすべてを描き切ろうというより、
監督が知りたいと思った三船氏の魅力の謎解きをしている感じ。
三船氏ー黒澤監督以前のチャンバラと、お二人の殺陣の違いとかの解説から入る。
映画史が始まるのかと思った(笑)。
初めて、『用心棒』で刀の斬殺音を入れたとか、黒澤監督のアイディアは有名だが、それも三船氏の身体能力あってのもの。
元々、三船氏は撮影の仕事を志望していたとか。
だから、撮られる時は、自分だったらどんな風に撮りたいかを考えながらポーズや表情を決めていたのかと言いたくなるほど、ポートレイトが、”銀幕の…”にふさわしいほど格好いい。
私生活での無茶苦茶なエピソードも出てくるが、
俳優としては”我慢の人”と称される。
『蜘蛛巣城』では本当に矢を射かけられるとか…。今ならそんな演出通らないし、昔でも拒否でしょう…。それでも、やってしまうのだな。そりゃ、荒れるよ。
とはいうものの、基本黒澤監督は、三船氏には、細かい演技指導はせず、自由にやらせていたらしい。
それに、独創的な発想で、期待に応えていった三船氏。
その発想の秘密を、生い立ち・経験や、人柄、様々な方からのインタビューから追っている。
インタビューを受ける人選は、どうして仲代氏が入っていない?とか、???が飛び交う。
来日時にスケジュールが合わなかったのかな?とかも考えられるが、
日系3世の監督から見たら、こういうフォーカスなのかと、新鮮にも感じる。
監督は三船氏の映画をすべて見ているのか?言語は日本語?英語吹き替え?
”日系3世”。どのくらい日本文化は監督の中に伝承されているのか?古き良き、祖先の祖国への憧憬?アメリカナイズされている?
その中で、黒澤監督の息子さんのインタビューと、
三船氏の息子さんのインタビュー。
それをつなぐスクリプター・野上さんの話。
三船史郎氏の話し方。家族としてはいろいろあったんだろうけれど、息子として父を支え続けたんだろうなと胸が詰まる。
後年、プロダクションを立ち上げざるを得なかった理由。
第2次世界戦争にも徴用され、特攻隊を見送る立場に立たされたとか、
三船氏は、自分がやりたい仕事をやったというより、与えられた・引き受けざるを得なかった仕事を、その時その時、最大限の努力を払って成し遂げた人なんだなあ、と思った。
香川さんがおっしゃるように、
若いころは灰汁の強い三國氏が、後年、おじいちゃん役でほのぼのとしたとぼけた味わいを見せてくれたように、
三船氏の好々爺も観たかった。合掌。
まだ、三船氏の映画は見ていない方が多い。
三船氏の映画を観る度に、この映画を観返すと、新たな発見・感想が出てきそうだ。
原作未読。
三船氏のお孫さんもコンサルティングプロデューサーとして関わっているのだが、息子である、史郎氏は監督の思うまま作らせたらしい。