「MIFUNE THE GREATEST MAN」MIFUNE: THE LAST SAMURAI 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
MIFUNE THE GREATEST MAN
日系アメリカ人のドキュメンタリー監督、スティーヴン・オカザキによる、三船敏郎のドキュメンタリー。
構成としては、三船の生涯や三船伝説を踏まえつつ、主に黒澤映画への出演にフォーカスし、共演者や崇拝者が三船の魅力を語る。
スピルバーグやスコセッシへのインタビューが最大の見所なのだろうが、個人的には、三船と直の共演者。
中でも、本作の日本公開前に他界した加藤武、土屋嘉男、中島春雄、夏木陽介のインタビューは貴重!
ある意味、彼ら4名の“遺作”でもある。
本題に入る前に、日本映画に於けるチャンバラの歴史。
サイレント時代のチャンバラ映画が幾つか紹介され、これも超貴重!
日本人の精神には昔から、チャンバラ、時代劇、そして侍が根付いている。
三船敏郎を知らない世代/若者でも三船敏郎を知る事が出来る非常に見易いドキュメンタリー。三船入門編。
それはそれで悪くはないが、ドキュメンタリーとしてはちと型通りで淡白。
振り返る作品は黒澤作品や時代劇などの“侍映画”がほとんどで、現代劇での力演『黒部の太陽』や晩年の名演『男はつらいよ 知床慕情』などにも触れて欲しかった。
でも、本作からでも改めて、三船敏郎に惚れ惚れする。
あのギラギラした存在感、力強い演技。
努力はひっそりと陰でし、人前では見せないプロフェッショナルぶり。
そして、人としての器の大きさ、深さ。
三船は大スター。あの時代の大スターはましてや大部屋俳優と話をするなんて絶対有り得ない中で、三船は中島春雄らと親しく談笑してたという。
スピルバーグの『1941』出演した時、コメディだが真面目に演じる事を心掛け、カットが掛かると一番に笑ったという。
撮影現場や事務所の掃除を率先して行う。
そして、長きに渡って名コンビを組み数々の名作を残し、『赤ひげ』を以て黒澤明とのコンビ解消。真意は分からないが、決して仲が拗れた訳ではなく、寧ろ愛情と尊敬を持って。
語っても語り尽くせない三船敏郎の魅力。
個人的に最も好きな三船逸話は…
(作中では触れられていないが)
メキシコ映画『価値ある男』への出演経緯。
この作品で、主人公をどうしても三船に演じて貰いたい監督は、直接日本に赴き、東宝に交渉。
が、この時三船は年に何本も映画に主演する多忙な身で、本人に会えないまま、東宝で門前払い。
分かってた事とはいえガッカリしてホテルに戻った監督の元に、三船本人から「会いたい」との連絡が。
そして、出演を承諾。
監督は最高のホテルや最高の料理など国賓級のもてなしをしようとするが、三船はそれらを全て拒否。
「あなたたちと同じ所に泊まり、あなたたちと同じ物を食べる」
この逸話を初めて聞いた時、心底震えるほど感動した。
元々大好きだったが、改めて三船敏郎に惚れ直した。
唯一無二。
これが、三船敏郎という“漢”なのだ。