劇場公開日 2017年1月21日

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「極限状況での人の悩み、苦しみ、葛藤」沈黙 サイレンス 雅宏さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5極限状況での人の悩み、苦しみ、葛藤

2022年1月14日
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この作品は、棄教したことの是非を問うものでも、キリスト教の善悪を考えるものでもなく、1人の宣教師が棄教にいたるまでのその悩み、悲しみ、苦しみ、葛藤を描いたものだと思います。
過酷なキリシタン弾圧のもと、自分が信仰を守ろうとすればするほど、さらにたくさんの信者が拷問を受けて処刑されていくのを目の当たりにして、ロドリゴ宣教師は、自分が殉教することよりもさらに激しい心の苦しみに襲われます。この状況下で尚神は自分に踏絵を踏むなと仰るのかー。
この映画を見た時、天正遣欧少年使節の4人の使節たちの帰国後の生涯を思い浮かべました。
千々石ミゲルは棄教し、原マルチノは禁教令を受けてマカオに移住してそこで亡くなり、そして中浦ジュリアンは禁教令が出たあとも布教を続けて最後は穴吊るしの刑で処刑されます。
時代は下って2007年に中浦ジュリアンはローマ法王によって福者の称号を授かりますが、しかし、過酷なキリシタン弾圧の中で、3人それぞれ悩みや苦しみや葛藤があったはずで、誰の生き方が正しかったとは決めつけられないでしょう。
正義や大義に殉じた人はもちろん立派ですが、現実に負けてしまった者の悩み、苦しみも忘れてはならないと思いました。

雅宏