「いい映画だが観ていて辛くなる」沈黙 サイレンス ジョニーデブさんの映画レビュー(感想・評価)
いい映画だが観ていて辛くなる
スコセッシ監督は以前、「最後の誘惑」でもキリスト教を扱っていたが、キリストが誘惑されてしまうという、キリスト教徒からみれば、とんでもな展開で、かなり非難を浴びるような内容だったので、この映画を見終わった時、スコセッシ監督にしては意外に真面目な映画だと感じた。
個人的には残酷なシーンが多かったので、余り好きな作品とは言えないが、映像美、ライティング、音響、セット、もちろん役者の演技等を含め、かなり全体の完成度は高い作品である。
主人公の苦悩にはかなり共感でき、棄教したことも致し方ないのではと思っていたら、最後、遺体の中に十字架が隠されたいたことに(ある程度は予想できたが)、最後まで棄教したことに悩んでいたのではということが伺えて、ジーンとくるものがあった。そして、エンドロールとなり、普通なら賛美歌か何かの厳かな感じの音楽が流れるところ、音楽はなく、敢えて虫の声と波の音にしたところは、心憎い演出だ。
強いて注文を言えば、主人公が棄教する踏み絵のシーン。逆さ吊りで殺される寸前の何人かを救うためだったが、彼らは顔がむしろで覆われていて顔がわからない。主人公が最初に捕まった時、一緒に捕まった数人の男女がいて、牢屋も一時一緒に過ごした人たち。結局、一人は刀で首を切られ、他の人たちも結局海に投げ込まれ、死んでしまった。顔がわからない人たちよりも、このような一緒に過ごした人たち・・・親密感を覚えた身近な人たちを救うという、より主人公の棄教に対する「止むを得ない」感が増したのではないか。
それにしても、外国映画にしては日本人の英語が違和感なく感じられた。設定そのものが、通辞以外は片言の英語しか喋れないはずなので、流暢な英語のほうが不自然かもしれないが。逆に、イッセー尾形の英語はうますぎて、不自然かもしれない。
共感いただき、ありがとうございました。
初めてコメント寄させていただきます。
おっしゃる通り、非常に真面目に作られた衝撃作ですし、こんなにも真摯に、信仰と命を問いかける映画は無いと思います。