「ずるい映画として忘れられない」沈黙 サイレンス tubさんの映画レビュー(感想・評価)
ずるい映画として忘れられない
アダム・ドライバー(カイロレン)が好きだったので見た。きっかけとしてはそれだけです。イッセー尾形も好き。舞台やめちゃったので久しぶりに見たなと感じました。原作は読んでいません。
色々印象には残っています。踏み絵というのは知ってたけど、大人になって一番がっつり映像を見たなという思い。
セットや俳優たちの演技も素晴らしかったんだと思います。一生懸命見ました。
でもどうしても、「そっから(逃亡シーン)始めるのずるくない?」っていうのが拭えず忘れられない作品です。
キリスト教ってそもそもそんなに素晴らしいですか?地球上で最も血を流させてる宗教じゃないですか?イギリスとかフランスとかひどいですよね。天草四郎、オタクの大好物の素材ですし、彼はただただ信心深かった純真な若者だったかもしれないけど美化されすぎじゃないですか?十字軍の裏の顔なんて色々暴露されてますよね。
日本が鎖国をしたのは、キリシタン大名が火薬や鉄砲などの戦力と引き換えに日本人キリシタンを奴隷として50万人も海外に売り飛ばしてたからじゃないですか?西欧の世界戦略的にはキリスト教を餌に、現地民から文化とアイデンティティを奪って財力と労働力を手にすることが目的だったのは事実で、日本だってインカ文明のように滅ぼされていたかもしれない。だってみんな黄金の国ジパングを目指してたんだから。イエズス会がその手先だったことは事実ですよね。イエズス会の組織の人間として宣教師たちがそのことを一切自覚してなかったとは思えません。だから、作中の宣教師と信徒たちの立場は全く違うものだと思います。宣教師たちは国家的原住民侵略作戦に失敗した人たちです。可愛そうですか?「キリスト教を信じるか信じないかは別に自由だよ。でも侵略はだめ」って作中でも浅野忠信かイッセーに言わせてませんでした?侵略してる自覚がない宣教師たち、よっぽど恐怖の塊じゃないですか?超排他的ですよ。改宗が順調だったら日本人総奴隷ですよ?
当時秀吉に「日本は自分の国だ」っていう自覚があって、天下統一がほぼ間に合って、外交をコントロールすることができたことは奇跡なわけです。確かに無いで済むならないほうがよかったキリシタンたちの犠牲だとは思いますが、彼らが可哀想だからって鎖国中にじっくりと培われた江戸時代の文化を否定するんですか?今その文化のおこぼれで海外戦略してますけど。
自分が受けた歴史の授業を思い返しても、「キリシタン弾圧があって踏み絵などをさせていた」というのは教わりましたが、それが国を守るためだったという教え方はあんまりしてなかったような記憶です。どうも「天草四郎かわいそう」っていう方向に引っ張っられて終わった気が、、、。そこがそもそも間違ってるんですけど。今も歴史教育的にはそんなもんなんでしょうか。
基本的に踏み絵させるほうが悪者的な切り取り方。確かに自尊心を破壊するひどい拷問だったとは思いますが、キリスト教が行なっていた拷問の方がよっぽどひどかったでしょう?キリスト教が勝った方がよかったんですか?
そういった背景を無視して展開する映画も、日本人なのにスルーして「信仰は辛くて美しい」とか言ってるレビューも、なんなの?って思います。一神教の人たちは他の宗教を一切認める許容がないんですよ?改宗しなきゃ火あぶり皆殺しなんですよ?彼らが成功してたら神社仏閣バンバン破壊されてたんですよ。神道の方は仏教も受け入れたようにキリスト教だって受け入れる気でいたのに、こちらを尊大に否定してきたのはまずあっちです。
白人に憧れすぎじゃないですか?西欧の強引な世界ごちゃ混ぜ奴隷化計画(グローバル化)から逃れた日本は稀有な国です。
お正月に初詣に行って、仏壇に手を合わせ、クリスマスを楽しみにしてる日本人は、とても不思議かもしれないですが、皆殺しにしようとするよりよっぽど良くないですか?神道や仏教はキリスト教に比べて薄っぺらいですか?私は、強迫観念を植えつけることなく生活に寄り添ってくれる八百万の神々は頼もしい存在だし、季節ごとのイベントを大事にする日本は実は大宗教国家だと思ってます。まぁ神様というかほぼ妖怪になってる感もありますが、、、。
別に好きな宗教を信じればいいし、無知で純朴だったキリシタンたちはかわいそうだったと思います。イッセー尾形に言わせたように、
「この国には合わない」。
その部分だけが、監督が勉強して受け入れた部分なんだろうなと思いました。それ以外は、結局のところ白人の優位性、侵略の正当性を表現するのにいい素材だったから撮ってみたんだろうとしか思えません。今や恥です。
なぜ日本には1%しかキリスト教徒がいないのか。中国や韓国ですら3〜4割もいるらしいのに。そのことの方が興味深くないですか?
原作者がキリスト教徒だし、製作陣も海外の方も、そもそもの背景と日本の慣習をどこまでわかって見てたのか?まぁまず絶対理解できないでしょうね。あくまで「俺たちのキリスト教こそが正義なのになんて野蛮なことしてくれてるんじゃい!」っていうスタンスなんでしょう。なので、逃亡シーンから始まってずっと「俺たち悲劇」なトーンだったことがずるくてずるくてなかなか忘れられません。みた海外の人も、あ〜〜信徒たちが受難だ〜〜って感じでしかないんでしょう。遠藤周作はどうだったのか。気にはなるけど原作長そうなので読む気にはなりません。
コロンブスの像も倒されたし、今後見る人からは違った評価をされる映画になるんじゃ無いでしょうか。
そういうのを含めると、「日本人が見ても違和感がない」というけど出演してた日本人の方達は何を考えてたんでしょうね。特にキリシタン側。