「曇天の暗い海と深い闇」沈黙 サイレンス takidegesoさんの映画レビュー(感想・評価)
曇天の暗い海と深い闇
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キリスト教を知らない方には少し難解かも知れません。少しばかり宗教的な問答があります。比較宗教学や哲学・道徳的な論争もあるのですが、小説の「沈黙」は映画よりかなり突っ込んだ論争がされています。
これは遠藤周作が小説やエッセイで屡々語っていることなのですが、当時のキリシタンにはキリスト教が正しく伝わっていないのではないか、ということです。映画の中で太陽を指差す場面がありますが、あれは大日如来のことで、大日=デウス の発音が似ていることから、誤解して信仰してしまっていたのではないか、遠藤はそう語っていました。
苦しく楽しみも教養を与えるものもない、農民たちの暮らし、そんな中に不思議な説法と儀式を行う見たこともない西欧人、苦しみばかりの現世から解放されて、パライソ(天国)に行ける。彼らを惹きつけないわけがない。来世を夢見て、陰惨な拷問に耐え抜いて、やがて果てていく。
現代でも過激なムスリム達が自爆テロを起こしたりしてる。彼らのように、当時のキリシタン達は、間違った信仰をしていたのではないか。つまり「地に根付かない」とはこのことを指しているのです。
遠藤は現代の小説家では村上春樹、安部公房に次いで海外で有名な作家です。司祭が踏み絵をするというショッキングな内容にカトリックからの反発は未だに強い。本来なら、大江ではなく遠藤がノーベル賞を獲っていたはずです。スコセッシ監督が長年実現できなかったというのも、そういう意味で困難さがあったのでは。
小説をかなり忠実に再現したと思います。あと、町人や、武士の表現方法が外国人の演出らしく、面白いなと思いました。
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