「信仰とは」沈黙 サイレンス everglazeさんの映画レビュー(感想・評価)
信仰とは
無駄な音楽は一切ありません。
浜辺の波音、虫の鳴き声、そして「神の沈黙」だけが流れます。
司祭を熱望する切支丹達。司祭の存在で真に心から救われた人もいたでしょう。モキチの死に様には涙しました。しかしキリスト教のために闇に隠れ、拷問されて死ぬのなら、何のための改宗なのか。やたらと十字架やその他のグッズを求める姿は偶像崇拝の恐れがないか。実際救いを求めたのは神ではなく、現実の苦労から逃れたい一心で夢見た天国なのではないか。自称切支丹達がどれだけ教義内容を理解していたかは疑問であり、布教は単にポルトガルの思惑と、信者の増加を狙う司祭の傲慢ではないかという問いが暗に投げかけられます。
踏み絵を前にして司祭に目をやる信者達。信仰と呼ぶに相応しいのか…対象が司祭になっただけで、日本人独特の崇高な忠誠心にも見えました。
数々の拷問を目の当たりにし、幾度の祈りにも奇跡は起こらず、司祭自身も信仰心が試されます。度々自分とイエスの人生を重ねるという、少々思い上がった信心を持っていたRodriguesですが、郷に従い、信仰を捨てるという重い「十字架」を背負うことで、信者の命を救えることに、神の真の御意を見い出したでしょうか。何度も彼に赦しを乞うキチジロー。赦すのは神ではなく、彼を蔑んでいた自身の心だと気付いたでしょうか。
洗礼や告解といったキリスト教の一連の儀式。踏み絵の儀式。武士も認める「ただの形式」。それらがどれだけ人の信仰心を測れるのか。儀式の無意味さも感じました。
現代でも日本が「沼」なのかは分かりませんが、多くの日本人が特に何も真剣に信じていないからこそ、ハロウィンやらクリスマスやら、異宗教・異文化の面白い「形式」だけをすんなり取り入れられるのかも知れません。
便宜上とは言え英語の堪能な庶民が多いことには違和感を覚えますが、寂しくも美しい日本の風景、貧しい漁村などは、近頃の邦画の時代劇より真に迫るものを感じました。
どちらか一方を正当化するような片寄った視点ではなく、努めて公平に描いており、観客の受け止め方を制限していない所が良いです。偏見的描写など入れずに、丹念な調査、丁寧な創作に感謝します。
"The price of your glory is their suffering."
コメントへの返信有難うございます。
レビューを書く前に、皆さんのレビューを辿って読んでいたところ、結構辿った所にeverglazeさんのレビューが有り、そのままコメントを入力。まさかの、コメント先行レビュー後入力でした 🙏
お書きのように、宗教って儀式的な要素有りますね。宗教には疎いですが。