「日本人社会の本質をあぶり出すスコセッシ監督の手腕」沈黙 サイレンス AuVisさんの映画レビュー(感想・評価)
日本人社会の本質をあぶり出すスコセッシ監督の手腕
序盤、アンドリュー・ガーフィールドの「キチジロー!」とたどたどしく呼ぶ台詞が、シリアスな状況にもかかわらず微笑ましい。とまあ、そんな些細なことはさておき。
もちろん宗教と信仰が大きなテーマとしてあるわけだが、過去から現在まで不気味なまでに変わらない日本人特有の社会、支配と服従の構造と手法、個人が集団に属したときの暴力性と残虐性といったものが、外国人監督の客観性によって的確に――的確すぎて日本人観客には痛いほどに――描き出されている。その意味で、クリント・イーストウッド監督の「硫黄島からの手紙」に通じる作品でもある。
日本人キャストも、とてもいい。イッセー尾形の役作り、窪塚洋介のしたたかな弱者っぷり、塚本晋也の凄絶な死にざま。彼らの熱演の前にややかすみがちだが、浅野忠信のつかみどころのなさ、厳しさと親しさを自在に使い分けて宣教師に棄教を迫る複雑なキャラクターも、確実に効いている。
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高森 郁哉さんのコメント
2017年2月6日
> 史実を伝える映画として言語についてはどう思いますか?
やはりポルトガル語を話している体で俳優たちが英語を話しているのは気になりました。かと言ってポルトガル語を話せる俳優をキャスティングするとなると選択肢が大幅に狭まるし、米国での興行も厳しくなるのは確実なので製作費も集まらないし、、ということで仕方ないのでしょう。