「夢か現かの世界観」ジムノペディに乱れる ニックルさんの映画レビュー(感想・評価)
夢か現かの世界観
映画館のシーンで板尾が語るセリフがもし真実だとするならば。
つまり彼は、交通事故以来この世界が虚構なのか現実なのか分からなくなっている。そして彼は植物人間となった妻に水を注ぐ事が愛だと考えている。だが、人は簡単にはそんな風に清廉には生きられないものだ。
手持ちカメラによる揺らいだ視点、不条理にも発情した雌猫のように彼に寄ってくる不思議な女たち。こうした半分夢で、半分現実でという微妙な世界観に浸りながら彼の情事の行く末を見つめ続ける事は耽美である。いい意味でそれだけの映画だが、実はこれは彼の死後の世界の話でね、彼は延々とこの奥さんへの憎悪と果てられない情交を輪廻しているんだよと言われても納得できそうな話だ。
誤解して欲しくないのは、現実だったとしても板尾みたいな心ここにないような男は何故かモテる。
板尾の奥さんが植物状態である事は伏せられたまま、何故か板尾がモテ続けるのに最後まで事を終えることができないという謎をかけたまま物語は淡々と進む。このヨーロッパ映画のような構成は鑑賞する人を選ぶだろうけれど。
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