「作家性が発露せざるをえない特殊な土俵際プロジェクト」ジムノペディに乱れる ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
作家性が発露せざるをえない特殊な土俵際プロジェクト
「低予算、早撮り、本編時間は7、80分程度、10分に一度は絡みあり」そんなルールのもと大量生産されてきたロマンポルノ。その再興を謳った今回の第一弾もかなり変わった味わいに仕上がっている。台詞や演技も地表から数センチ浮遊しているように特殊で、ファンタジー、あるいは白昼夢と言ってもいい。だがその特殊性を板尾創路が体現するとなぜかしっくりときてしまうのだから不思議だ。悲哀とおかしみ、若干何かに取り憑かれたような表情が同時成立するとはなんたる俳優であることか。
エロスだけではない。本作にはミステリー色も漂う。「なぜ彼はやりまくるのか?」といった、ロマンポルノにあるまじき命題にもきちんと落とし所を作ろうとする。さらに劇中では主人公の口を借り「映画とは」「愛とは」との言葉も。そういった細部の息遣いに行定監督の濃厚な作家性を感じ取れたことは収穫だった。誰より裸になったのは監督自身だったのかもしれない。
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