「絵の力だけでなくストーリーの確かさも相まってストップモーションアニメの意義を強く感じさせる。必見と言うよりない。また"Two Strings"の意味も深い。」KUBO クボ 二本の弦の秘密 ハルさんの映画レビュー(感想・評価)
絵の力だけでなくストーリーの確かさも相まってストップモーションアニメの意義を強く感じさせる。必見と言うよりない。また"Two Strings"の意味も深い。
邦題にむりやり付け加えた「秘密」の落とし前をどうつけるのかはともかくとして、三味線なのになぜ「二本の弦」なのかは観ればわかるのだけど、個人的にはあれはまさにDNAの二重らせんを思わせる。だから母と父、そして子の三本の弦が張られる時の感動は忘れられないものになりそうだ。
字幕版で鑑賞したが、それが良かったのだろう。舞台は日本の中世をイメージしたものだがやはり自然の描写や人物の表情など東洋のそれではなく、言うなれば日系二世や三世が出ている映画作品のような印象を受けていた。であったので【ジョージ・タケイ】がクレジットで出た時は見事な配役だと思ったし、そこにはこの偉大な日系俳優へのリスペクトを感じさせてくれた。吹き替え版も観る予定だが、まず制作側の意図している雰囲気で観られたことが良かったと思える。
プレスコで制作されていることもあり、サルはシャーリーズの力強さと意外なまでの母性を落とし込み、クワガタにはマシューの収録時の身振り手振りが反映されているという。3Dプリンターを使ってあの繊細で豊かな表情を作る手法などは驚嘆すべきものだ。
物語としては早い段階で「いつものやつ」だと言うことははっきり示されるのでそこは何も問わない。これほど優れたアニメーションにひねりを加えたところで子供には意味がないし、展開としてなぜそうなるのかと言われたら「その方が絵的にも面白いものができるから」と言うことなのだろう。不思議な話ほど面白く、また心に残ると思う。
ラストで武器に頼らないというのがまた素晴らしい。ただしこれは男の子には物足りないかもしれないが。
EDで流れるレジーナ・スペクター版「While My Guitar Gently Weeps」のアレンジも素晴らしく、子守唄のようでもあった。この選曲は偉い。
一週間に3秒ほどしか撮れないストップモーションアニメ。LAIKAの次回作は何年後になるのか‥