「期待通りの虚淵ゴジラと戦う動機。」GODZILLA 怪獣惑星 ビート板教室5年目さんの映画レビュー(感想・評価)
期待通りの虚淵ゴジラと戦う動機。
脚本家虚淵玄作品は一つのパターンを持った不条理、乗り越えるべき壁、が共通して描かれています。
それは、愛した人が病だったというような個人にのしかかるものではありません!
作品により多少の差はありますが、そのパターンとは
自分達が必然的組み込まれている枠組み、社会がある→実はその中でビックリ理不尽システムが稼働していた→自分達はそのシステムの利用者である。というものです。
今作にも逆カタルシスを味あわせてくれるビックリ理不尽システムが用意されています。
一つは、摂理がもたらす破壊者ゴジラ。
もう一つはゴジラからの逃避がもたらした、人型宇宙人達の共同体社会が弱者を切り捨てるシステムに、依存しながらジリ貧で稼働していくしかないという事実です。
主人公ハルオがゴジラと戦う理由とはまさに、そのシステムを利用しながら静かに資源が尽き、死んでいくことを拒否し、絶望感が蔓延する状況を打開したいという動機です。
今までのゴジラ作品がほぼ全てゴジラからの防衛だったのに対し、今作は主体的な攻撃であるという点も異色です。
もしかしたら月に入植しつつ打開策を検討する方法もあったかもしれない。
しかし本作はゴジラへリスク承知で積極的に挑むこと、背を向けながら生きてたまるかと、実益よりも湧き上がる感情をベースに無謀な戦いを挑みます。
この動機は、進撃の巨人におけるエレンに近いものがありますが、家族を惨殺されたエレンの個人的な復讐心以上に、口減らしシステムに依存する状況やゴジラから逃げた事実そのものへ闘志を燃やす、ひと昔前の活動家のような正義感を持つ主人公が面白いなと感じました。
この、主人公に対し乗れるか否か、本作を楽しめる一つの別れ道かもしれません。
一本の映画を予算獲得の為に二部作にする昨今の潮流とは違い、話を広げていくシリーズものの名手である虚淵玄作品だからこその三部作であることを願いつつ。
リアリティラインがより自由のきくアニメだからこそできるであろう、ゴジラシリーズお馴染みのあのキャラクターの活躍にも今後大いに期待します!