映画 夜空はいつでも最高密度の青色だのレビュー・感想・評価
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劇中劇のような前半が興味深い
ソフィア・コッポラ監督の「ロスト・イン・トランスレーション」のような作品。「ロスト〜」は異国の都会で孤独に直面する物語だ。
対して本作は、もちろん異国ではないし、孤独とも少し違う、
では何が似ているかというと、その場所に馴染めずに浮いた存在になっていることだ。
本作のメインの2人、美香と慎二は、生きることの意義、金銭的にではなく生き方について見失って、いや、見つけられずにいるように見える。
なぜ生きるのか分からなくとも生きなければならないと思い、同時に、誰しもいつかは死んでしまうし、死が突然訪れるかもしれないという思いが無気力さを生む。それが、他人と積極的に関わろうとしない理由でもある。
人は一人では生きられない。一人で生きてると思っている人でもその多くは一人ではない。
裏を返せば、積極的にコミニケーションをとっていかなければ辛い生き方が待っているといえる。
その場所に馴染めていないとは、人の輪に、社会に、溶け込んでいない。溶け込もうとしていないのである。
終盤に、慎二が美香に向かって「何かゴメン」と言う場面から劇的に変化する。
それまでの二人は、当たり障りのないテキストを読み上げているような、演技で言うなら棒読み演技のような言葉を言っていた。つまり「何かゴメン」の前までは心を開いた、心のこもった言葉ではなかったのだ。もっと言うならば、関係ない人に向けた嘘の言葉だったのである。
「何かゴメン」は、今まで壁を作った嘘の心で接していてごめんなさいということなのだ。
嘘の心、嘘の言葉のままで親密な関係になることはできない。
ただ生きて死を待つだけの生き方を、親密になりたいと願う好意が破壊する。
愛する家族と離れて暮らさなければならない者、愛を求めるが中々成就しない者、そういった人よりも美香と慎二は恵まれている。ほんの少し手を伸ばせば共に生きる人を掴めるのだから。
誰か一人でいいから心の繋がった存在を見つける。それがその場所に馴染むことにつながる。
「ロスト〜」は切れた繫がり。本作は繋がった繫がり。その違いはあるが本質的には似た物語だったように思う。
昨晩見終わったばかりのはずなのにもう内容があまり頭に残っていない。...
昨晩見終わったばかりのはずなのにもう内容があまり頭に残っていない。
強いて言うなら、人はいつでも死と隣り合わせであり、だからこそ少しでも素直に自分の気持ちと向き合い、それを相手に伝えることで、いずれ死ぬ友人や恋人、家族とのお別れをきちんとしてあげることが出来るのではないだろうか、という感想を抱いた。
主人公の男も女もともに一癖どころか五癖くらいある曲者であり、なかなか人に心を開けなさそうな印象が強かった。実際、最後には結婚する二人だが、そこに至るまでお互いに心を許すことなく、壁を数枚挟んで会話をしている様だった。最後の最後もまだ少し壁がある様に感じた。
最初は互いに居場所がない孤独な都会で生きる若者であり、路上ライブをする女の人もあれは売れないね、と女主人公に言われる始末であった。しかし最後には似た部分のある二人がお互いを互いの居場所とし、冒頭で女主人公が一人で見た飛行船を二人で見、路上ライブお姉さんはメジャーデビューを果たした。
物語としては一応ハッピーエンドなのだろうが、男主人公の死んだ友人に焦点を当てるとかなり悲しい気持ちになる。ガールズバーで連絡先を聞いた、惰性なのか本当に少し気になっていたのか知らないが街で数回男主人公と出会い意識しているかのような演出がされていた女主人公と1回デートをしただけなのに、死んだ男主人公の家にはそのデートの際に撮ったと思われる女主人公との2ショット写真が丁寧に額縁に入れて飾られていた。普通だったらよほどの運命を感じていたとしても1回のデートでそこまでするかと思うが、彼にとっては、都会の工事現場で肉体労働者としてこき使われるような男たちにとっては、それだけ居場所がなかったのであろう。現に彼のお葬式には職場の人間と女主人公くらいしか見受けられなかった。この男主人公の死んだ友達こそが、この映画のテーマを伝える上で一番大切な働きをしたのではないかと私は考えている。
アニメ映像を入れたりシーンチェンジの工夫など色々と演出のこだわりは感じたが、これに関しては内容を伝える上でなにか効果があった様には感じ取れず、製作者の自己満足のように見受けられた。テーマ性や役者さんの演技はよかったが、特にこれといって印象の残る作品ではなかったかなということで、星を少し低めに設定させてい頂いた。
青色だ。それに込められているもの
最果タヒさんの同名詩集を基に映画化したものです。
物語は、都会の住む2人の男女がそれぞれに抱えているお互いの苦しみや悩みと向き合いながら生きていく姿を描かれています。
原作が詩集を基にされているので、どこか詩的な要素が多く感じました。
そこにいる自分は、確かなものであるのか?
それは、ふとっ思う部分でもあるのかな。
周りいる自分と合わせ生きていると、自分という存在を忘れ、気づくと無性に死にたくなる事がある。
また、苦しんで、悲しんで、
また、笑って、喜んで
そんな事を永遠と繰り返しながらも生きていく。
やっぱり希望は、捨てたくない。
どこかで幸せがあるだろうと。
主人公達ののやり取りの中でそんな事を感じました。
とても味わい深い作品だなと感じました。
新自由主義全盛の現代日本の息苦しさを生活者視点で描き、無視できない映画!!
新自由主義全盛の現代日本から逃げられない、生活者の息苦しさを描いていて無視できない映画でした。女と過ごすのが、ささやかな幸せになっていて好みでした。ポエムや歌ありBGMはやりすぎると鼻に付きます。オールタイム理屈っぽい美香より玲の方が可愛いですが、玲は繋ぎ留めるのが難しい気がします。主人公の男性の片目が見えないのも、他者より幸せの感度が高いと思うので好みでした。フィリピン人男性が、このような暗黒日本に見切りをつけて帰国したので安心しました。みんな何でこうなっているのか分からず亡霊のようですが、時代を記録した貴重な映画だと思います。
最高にじんわりと沁みた
大勢の人が目を背けながら生きている日本社会の現実を愚直なでに見せつけながらも、観たあとに心がじんわりと晴れやかになる映画でした。
セリフ一つ一つがストレートなまでに心に突き刺さり、間も、映像の映し方や切り取り方、全てにおいて無駄な所がなかった。鳥肌が立つくらいに。
工事現場で雨が降ってきて、資材をブルーシートで覆うシーンは、今の見たくない現実を覆っているように感じた。
美香:半分しか見えないんでしょ。
慎二:うん。
美香:世界が半分しか見えないんだ。
慎二:うん、変だろ。
美香:でも半分見えれば上出来なんじゃない?普通半分も見えないから。
半分も見えていない人の方が多いのだろうな。半分見える人の方が、純粋だからこそ生きづらさを感じるこの世界。
現実に幻滅し嫌悪感さえ感じるからこそ、「愛している」という言葉が薄っぺらく感じる。本当は純粋に信じたいのに。信じられたらどんなにいいか。
でも、生きづらいこの世の中で、慎二と美香のように同じ事を感じている人同士が出会えたなら、こんな世界でも明日がどんなに明るくなるだろうか。
生きづらさを感じている人に、そんな中でも明日を生きる力を、この映画から得て欲しいなと思いました。
出演:石橋静河 池松壮亮 松田龍平
監督:石井裕也、原作:最果タヒ、脚本:石井裕也
努力は必ず報われる
常に「死」が身近にある若い男女が出会う設定なので、全体的に暗い印象の物語。さらに退職や母国に帰る仕事仲間たちとの「別れ」もそれに拍車をかけている。
唯一希望が持てるのは、誰も聞いてないのに、ひたすら演奏するストリートミュージシャンの存在。何度か登場するが、結局メジャーデビューするという展開になる。地道でもこつこつ努力すれば報われると信じたい。
このストリートミュージシャン、「深夜食堂」で、警官が好きで、出前したあと食べ終わるまでずっと待っているちょっと知恵遅れのような女の子に似ている。
あと、腰痛持ちの同僚が、「恋してるんだ、ざまぁ見やがれ」とよく言っているのが面白い。
詩の朗読や、なにげない会話が印象に残る。特に最後、「地震で多くの人が死んだら」→「とりあえず募金しよう」、「朝起きたらおはようと言おう」「ご飯食べる前はいただきますと言おう」「そういうことだよね」→彼が彼女の頭に手を添える。
人によって感じ方が違う映画かもしれない
タイトルが印象的で、池松君が主演だったので、多少期待をしていたのですが、今ひとつ、心に残らず、それほど主人公に感情移入もできなかったです。2017年のキネ旬ベスト1位で高く評価されているとは…。
台詞やナレーションの言葉が意味ありげなものが多く、いろいろ考えていたら、これは「詩」が原作だったようで、後でなるほどなと思いました。
都会を好きになった瞬間
自殺したようなものだよ
塗った爪の色
キミの身体の内側に探したって
見つかりやしない
爪の色が身体に見つからない、
これは、爪の色が人工的な色だから??
後のほうで、
それにしても暗いなあ
東京には黒がないからね
という台詞もありました。
タイトルそのものが「最高密度に青色だ」だし、
原作者の詩人は「色」で何かを表現しているのかも
主人公の女の人(石橋静河)は上手かったです。不安と悩みを抱え、都会で絶望して生きているんだけど、ちょっと面倒くさい感じ(理屈っぽい、特に愛されることに関して)を、それほどオーバーにならずに自然体で演じていたような。(この人、朝ドラの『半分、青い』に出てました。ちょっとふてぶてしい感じであまりニコニコせず、年齢のわりには腰が据わった感じだなと思ってました) ただ、タバコの吸い方は板に付いていなかった。おっさんの吸い方みたいなわりには。
映画全体、暗いムードで抑揚のない感じだったけれど、最後は少し、生きる姿も見えてきて救われたかもしれません。
恋愛が肉欲ゲームに侵食された時代の中で
『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』(2017)
恋愛という方法が肉体の快楽ゲームと化してしまった日本を代表する東京。肉欲ゲームの他には、
空に飛行船が飛んでいても誰も気づくこともなく、誰もがスマホを眺めている路上の光景。主人公の女性は昼は看護師として、それだけでも重労働だろうに、夜は仕送りをするためにガールズバーでいやいやながら働いていた。主人公の男性のほうは、日雇いの工事現場などで重労働をしている。仲間の年輩の一人がガールズバーに行きたいと言い出して、仲間と行ったときに、仲間の一人と女性はデートに応じるまでになったが、仲間は若くして脳梗塞で死んでしまう。路上や仲間の葬儀などで主人公の男女は偶然に何度か会い、お互いが不器用だということで、いつしか、女性が男性を仕送り先の田舎まで連れていき、老いた父と女子高生の妹に紹介し、パートナーになっていくが、その経過で周囲の人達の衰えや死が挟み込まれてくる。肉欲ゲームの時代に客へのサービスとしてなのか、それが慣例化してしまったのか、ベッドシーンなど濃厚なラブシーンを入れたがる現代映画だが、この映画は、ラブホテルの中のシーンはあったりしても性交を垣間見せるシーンはない。そういう面からも、この複雑化してしまった浅はかな時代の中で、それとは違う純粋な男女関係や人間関係を模索しようという意図だろうか、だが、逆に主人公は思考の過程がくどくて難しかったりする。肉欲ゲームと化した危険性を、同時代の中で感ずるのが難しいほどになってしまっているということだろうか。貞操教育がなされていないのだから当然のごとくか。監督脚本は『舟を編む』の石井裕也で、この映画も不器用な風変りと現在では言われるような男性が主人公だったが。石井自身も女優と離婚し、別の女優と再婚したりしているが。女性主人公の石橋静河は、石橋凌と原田美枝子の娘だった。劇中に、恋愛は元カレと元カノだった人が交換して出会うことかなどと皮肉に聞こえるようなのがあったが、女性主人公を捨てて、よりを戻したいという男性役が三浦貴大だった。三浦はテレビドラマの『高嶺の花』でも同じような役柄だった。肉欲ゲームに成り下がらない男女の結びつきについてどう感じるのか。それを思い出させようとする作品かも知れない。だが、すでにこうした汚れた時代の中で意味をくみ取るのが不可能になってしまったような男女がかなりいるに違いない。そういう人たちはどういう感想を抱くのだろうか。
見終わって、自分はこの映画を見て何を得たのかと考えた。わからなかっ...
見終わって、自分はこの映画を見て何を得たのかと考えた。わからなかったけど、見終わってこんなに考えたのは初めてだった。死とこれからの話。実日子さんのシーンを楽しみにしていたけど死んだ役だったからちょっと残念だったけど見れてよかった。あと歌がすっごく良い!!!
がんばれ〜‼︎
2018年映画館鑑賞
20本目‼︎
石橋静河
自然な感じでいいねっ‼︎
重いお題にしては
そこまで深く感じられなかったです。
池松壮亮や演者さん達は
みんな良かったのですが
何故だろう?
騒音に悩まされる隣人が
何かやらかすと
思ってたのですが
最後まで
何も起こらなかったですねっ
「愛してたって」メールで
会った同級生と行ってた
中華屋さん?は
ヒドイ(笑)
まじナイゎ〜
メニューもほぼ無い
麻婆豆腐
注文入っても作んないし(笑)
日常の中での小さな幸せを見つける映画
日常の世界の色んなところで、戦争や災害や色んな悲しいことが起こる中で、自分が生きてる事のありがたみを感じて、小さな幸せを見つけていく映画だった。
「誰かの元彼だった人と誰かの元彼女だった人が愛を囁いてる」のがバカバカしいって、ほんとにそうだと思ってしまった。
そんな店ないだろ
都会の陰の断片を集めて組み立てる。詩的表現が多く、リアルさは求めていないのかもしれない。しかし、個々のディテールが弱いと記号化する。作り手は工事現場や性風俗を見下してないか?海外帰りの彼女が突如現れて、個人的にはプチっと切れた。実は結構優秀でしたみたいな設定要るか?濡れ場の有無ではなく、SEXそのものがない世界は意図的かと思うが、人の根本的な所業であるわけで、共感できなかった。役者陣には不満はない。
東京住みにはたまらない作品です。
まず最果タヒの詩だけど、残念ながら全然記憶に残らず響きませんでした。一回切りで終わりだったから反芻させたり文字としてもっと出す必要があったのでは?頑張れの曲だけが残って少し出番多すぎて鬱陶しいです。でも笑える。あとは全体通して良い感じに仕上がってると思います。ただ他の人も言うようにムダな部分もややあり、どうせなら外国人労働者がなぜ日本に来てるのか?田中哲司の生きざまをもっと描くか無視するかとかしないと気になってしまった。演技演技しない池松さんとか龍平くんの芝居は好きです。というか近年の俳優さんって性格俳優が減ったおかげで自然に観られるので安心です。石橋静河さんはこれから期待です。
東京の青空。
最果タヒの詩は読んだことがない。しかし凄い名前だな(^^;
タイトルが冒頭の詩の中に出てくる。ヒロインが語る台詞が
詩調だったのはそういうことかと観てから気がついたのだが、
映画初主演という石橋静河の演技は骨太で、詩を映像化した
監督のチャレンジはほぼ成功している。ただ東京で生きるだ
死ぬだの考え方には閉塞感が強く憂鬱に苛まれる部分が多い。
中高年日雇い労働者の現実、とりわけ田中哲司の腰痛は自分
にまで達する痛みに感じ取れたし、インテリ爺さんがある日
突然亡くなっていることもリアルだが、そんな生き辛い毎日
を懸命に生きている主人公達若者を応援したい気持ちになる。
生死
観ているうちは、あっさりしている映画だなと思って観ていたが、上映後になってみると生死について考えさせられた映画だった。
主人公の池松壮亮さんの自然すぎる変わった人の役はすごいハマっていて面白かった。
石橋静可さんの冷静だけど心の内にある願望や欲が上手く表に出されていてすごく人間味を感じました。
劇中で身近な人の死があるシーンは周りの人の様々な感情が表現されててリアルだなあと思った。
日常で些細な事でも幸せを感じて、生きている実感をちゃんと感じていきたいと思いました。
印象に残ったところ
・前半で松田龍平が死に、複雑だか、2人の関係が深まっていく
・田中哲司さんが惚れやすい性格笑
・石橋静可の家に池松壮亮が会いたいと言って走って向かうが女子寮で入れなかった所 笑
・女子寮で入れなかったが、朝までずっと近くで座って待っていた池松壮亮さん笑
・劇中何回も出てくる路上ミュージシャンの女の人の、東京の歌 「がんばーれー!」
・隣の部屋のおじいさんが死んで、池松壮亮さん演じる人物が悲の感情を出した
池松君が出演、ストーリーもとってもよさそう これは見に行かねばだな...
池松君が出演、ストーリーもとってもよさそう
これは見に行かねばだな、と思って今日のレイトショーでみてきた。
率直な感想は…DVD買おうかな、と悩むほどによかった。
好きだったシーンは池松くんの走ってきたのに入れなくて
えぇ?!っていうリアクションと、2人乗り、テレビを二人で見ているシーン、です。
特に最後のテレビ見ているシーンはなんかわからんまま
めっちゃ感動して泣きそうになって
あれ、なんで泣きそうになっとんだろやばいやばいと思ってたら
主人公が泣きだしたからもうだめだってもらい泣き。
なんであんなに感動したんかはよく説明できん。
詩がもとになってるだけにナレーションやセリフが印象的だった。
パンフレットの角田光代さんの文章も読み応えあり。とりあえず、詩集読まなくちゃ。
意外なほどに正統派
とても綺麗で清々しい、原作者の名前とは正反対に生を高らかに謳った映画だなぁという印象です。
自殺した母に捨てられた、と思っている美香は「どうせ私は見捨てられる」という観念に支配されており、だからこそ人を求めるけど恐れてしまう。捨てられて保健所に連れて行かれる犬に自分を重ねるくらいだから、まぁ生きづらい。
そんな美香が、夜に一度突っぱねたのに朝まで居てくれた(つまり、自分を見捨てなかった)慎二との出会いで少しずつ安らぎを得る方向に進んでいく姿はなかなかグッときます。
また、東京の描き方ですが、孤独な世界と言うよりも巨大な逃げ場、もしくは避難所に思えました。美香も慎二も東京に逃げてきたのかな、と想像。美香は実家に居場所がなかったし、慎二も訳ありっぽかったし。そんな場所で出会い、互いの存在が居場所になっていくような後半の流れはなんとも優しい。
はじめはギャグだと思っていた東京の歌がだんだんマジになっていく演出には驚きです。サビの「頑張れ〜」が慎二の心とリンクしたり、あのシンガーが最後にメジャーデビューしたり、ベタなくらい熱くて清く正しく真っ直ぐ。
主人公2人の物語は清々しいけれど、周囲の人たちは哀しみがあり、なかなか味わい深いです。
孤独死してしまったインテリの隣人や、現場の仲間たちとか。慎二に言い寄った同級生は東京でも居場所がなくNYまで逃げるけど、まぁ逃げきれないだろうな〜なんて思ったりしました。
慎二の背景と変化がもう少し丁寧に描かれていれば、とも思いましたが、語りすぎないくらいがちょうど良かったのかな。美香を好きになった気持ちが虚無に陥っていた彼を変えたのでしょう。
終盤に美香と慎二が自転車で2人乗りするシーンがありますが、何故かとても美しく感じ、心に残っています。
余白
異常なくらい恋愛に嫌悪感を抱いている美香が、自然と本音を打ち明けられる慎司に恋をしていくのが、ドラマや映画の非日常な恋愛ではなく、日常ありふれていそうな恋愛で見やすく感じた。それによって、客が考える余白ができていて、映画の中に持っていかれる感覚が好きな私も、この余白がとても心地よかった。
また、批判的な意見もある、片方の画面を黒くする演出。私は好きだった。効果がどうとか言われると、素人の私はあまりわからないのだが、映画の中の人間に感情移入している客としては、その人が見ているのと同じ映像が見られることは嬉しいし、その後も感情を追いやすくなる気がする。
出会えてよかった。
想像以上にエモーショナル:文句たらたら
石井裕也監督の過去作に持っていたイメージとは、ずいぶん違う、若々しくて痛々しくてエモーショナルな作品でした。
原作になっている詩集を読んだ事はありません。たぶん、美香が語るモノローグが最果タヒの詩の一部なんだと思います。
私にはちょっと若々しすぎるかなーとは思ってみていました。
世界には恋愛が溢れているとは全然思わないし。
恋愛に縁がなくても全然焦りもしなく、むしろほっとしている人も多いと思うんですよ。
なのでまあ、私の物語っていう気持ちはしなかったですね。
でも悪くはないってゆうか、切ないし、成功しているとも思いました。全体的にいい作品だと思います。
美香ちゃん演じる石橋静河は、原田美枝子と石橋凌の娘さんらしいです。
あんまりどっちにも似てないなーと思ってみていました。
殆ど演技は初、だそうで、確かに「うまい」という感じではないです。
でも下手でもなく、演技している人ではなくて、美香として生きているように見えていました。
慎二に近づく怪しげな元同級生の女に、すっげー見覚えがある、だれ?どこででてる?と、色々考えましたらね、
妄想OL日記のさえちゃん役の子だとわかりました。さえちゃん!夏帆とバカリさんの後輩のさえちゃんです。すっきりしました。
そしてね、着てる本人が選んだわけではないでしょうが、膝丈のスリップね、あれを着てる2017年の20代女子はいませんて、と無言でツッコミました。
セックス前のにおいを醸す小道具として着せたんでしょうが、あのデザイン、絶対選ばんでしょう、2017年の20代女子は(リピート)!
この映画に限りませんけどね、ブラとパンツ姿が役者的にNGだからとか色々理由があるんでしょうけど、
選ぶとしてもワンピースの日じゃないですか?ほいでもっとカジュアルなデザインでしょ。あの胸レースは50代のセンスですよ。
なんか男の幻想って感じがして興ざめしました。
あっれー文句ばっかりになってますが、や、よかったんですよ?
躁っぽさがときどき出る池松くんとか(にしても汚い格好似合いすぎw)、HEROでのいい人っぷりが嘘のような正名さんとか(職場で死ぬなってゆっといて、が震えた…)、ダメさを前面に出した松田龍平も田中哲司もよかったんですよ。
なんですがよかったことより、不満の方が語りやすい作品でしてね、まだ言い足りないんですよ。
えっとね、片目が見えないことの表現として画面の半分が黒っていうのは、比喩なんだとしてもいいと思えなかったです。
あとワーキングプア(年収200万以下程度の人)ならばもっと狭い部屋に住みませんか?松田龍平の部屋も結構広かったし、家賃6万なんぼっていうのは、東京だとしてももう少し安くできるんじゃあとか思います。
収入低い設定なのに住んでる部屋が広いっていうのは、映像作品あるあるなので(自分調べ)、今作に限ったことではないのですが。
撮影機材入らないからかなーとか思っていつもちょっとさめますね〜。
えっと、いい映画なんですけどもね、文句が言いたくなってしまう感じでもあって、すみません。以上です。
半身とか片割れとか
好きな人は好きなのだろうなあと思う。
かくゆう俺も嫌いではない。
後半になり、物語の帰結を予想する事にはなるのだが、それをどおいう形で見せてくれるのかと期待する。
物語に起承転結があるとして、この作品の98%が起承であり、2%が結。
たった一言の台詞が転であったような気がした。
冒頭から主人公の心象が語られ、1人なのに1人になれない東京という街が映し出される。
雑音や人の声が、耳障りで、その心の内が投影され続ける。
物語の半分以上を使って、この「孤独」という状況とシステムが繰り返し、しつこいくらい語られる。
シンジは恐らく、自らその不自然なレースから身を引いた人なのだと思う。
諦めたわけじゃなく、なんだか馬鹿馬鹿しくなったのではないだろうか?
彼の台詞の端々には、人が人であるための定義のようなものが見え隠れする。
いわゆる、上映時間の大部分をかけて東京という狂気じみた街で暮らす事の葛藤とか懇願とか寂しさが語られる。
すこぶる陰気な作りなわけだ。
だけど、
これはやはり見る人にもよるのだけれど、俺はシンジの台詞に胸打たれた。
「半分しか見えない目で産まれてきた事を、初めて嬉しく思った。」
きっとこの台詞は、
「その半分を埋めてくれる、共有できるあなたに会えたから」
って事なのだと思う。
東京での濁流に流され、色んなとこにぶつかって、水底に押し付けられる事があったとしても、違う支流に流れこみ、迷って惑って、他の石とぶつかりあった挙句でも、安息できる場所がある。
それは誰しもに用意されてる。
今はまだ見当たらなくても大丈夫。
いつか貴方の前に現れるから、頑張ろう!
今を生きよう!
そう言われているような気がした。
不器用な女性を、不器用すぎる程、不器用に演じてたのか、元々の素なのかは知らんが、髪飾りをつけながら悪態をつく彼女を素敵だと思った。
変な話…
あの飛行船は飛行船じゃないと思う。
東京で飛行船があんな風に飛んでるの見た事ないし。今ある景色に目を向けたという事じゃないかと思う。
4分割される画面は、表面上の連帯感の表現かも。あの4人の中にもしっかりとある格差や壁という事を暗に映したのかもしれない。
いづれにせよ、
今、あなたは何と向き合ってるのですか?と問いかけられてるようである。
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