「曲者だが不思議な魅力を持つSF」ブレードランナー 2049 みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
曲者だが不思議な魅力を持つSF
本作は35年前の名作SF作品の続編である。退廃的で終末観さえ漂う乾ききった近未来(2049年)で、ブレードランナーである主人公・K(ライアン・コズリング)が自らのルーツを求めて流離う哀切感溢れる物語である。圧倒的な映像美、独特の世界観など、見どころは多い。しかし、本作は、単独作ではなく前作と融合した作品であり、繊細で哲学的なストーリーなので、前作を観たか否かで評価が分れる作品である。
前作を観た人は、前作を基準、ベンチマークにして本作を観ることができる。その間に登場した数多のSF作品に惑わされることはない。一方、前作を観なかった人は、スターウォーズ・フォースの覚醒、パッセンジャー、メッセージ、ゴースト・インザシェルなどの最近のSF作品を基準、ベンチマークにして本作を観ることになる。本作は、最近のSF作品との類似点が多く、どうしても既視感が付きまとう。作品のアイデンティティを見つけ出すのは難しい。前作を基に作られたSF作品が、逆に、本作を鑑賞し難くするという自己矛盾。35年という歳月の長さを痛感させられる。
私は、前作未見なので、繊細で哲学的なストーリーを完全に理解することはできなかった。本作は、前作と本作の2作品が生み出す多くのピースで構成されるジグソーパズルのようである。前作未見ということは、本作のピースだけのジグソーパズルを観ている感覚である。欠けた前作ピースは想像で補うしかないが全てのシーンを完全に補うことはできない。完全に補えることができるシーンもあるので、理解可能なシーンと意味不明のシーンの連鎖で、モヤモヤとしたスッキリしない感覚に襲われる。同時に、作品世界に漂っているような不思議な浮遊感がある。本作が只者ではないという片鱗には触れることはできる。
本作は、凄く面白いわけではない、大感動するわけでもない、難解な作品である。しかし、何故か惹かれるものがある、不思議な魅力を持った作品である。