「残念な出来」ブレードランナー 2049 zippo228さんの映画レビュー(感想・評価)
残念な出来
前作は伝説的な作品。それまでに見た事がないリアルで独創的な近未来のビジュアルは、その後のSF映画に多大な影響を与えた。そんな「ブレードランナー」の特徴的なビジュアルとは、雑然とした都市の在り方だったのだが、今回はだだっ広い郊外が多い。なぜかというと、前作のラストシーンで主人公とヒロインは郊外へ向かって旅立って行ったからです。その続き物となるために本作は郊外のシーンが多くなりましたが、しかしそのラストシーンとは、映画会社側の命令で後で付けで足されたものであり、元々の監督の構想ではなかったラストシーンでした。
そんな前作のラストシーンを引き継いでしまったので、「ブレードランナーらしからぬ」郊外のビジュアルばっかりになっちゃって、前作とのイメージのギャップが出てしまっている。
また物語の内容も「レプリカントは子供が産めた」という、前作のテーマ性に比べたらどうでもいい必然性に欠ける事柄でしかなかった。前作は自我や命の定義に関する謎がビジュアル化された、もっと奥深いものでした。
そんな前作の監督リドリー・スコットを制作に迎え、満を辞しての超大作となりましたが、往年のブレランファンを満足させてくれるものにはなっていません。これは監督であったリドリー・スコットと、長年ブレランを熱心に追求してきたファン達との、認識のギャップも大きかったんだと思います。長年のファン達はブレランについて議論し、考察し、色々な想像を広げてきて、むしろ監督自身より強い思い入れが育まれていたと思います。作中で使われた銃なんかも、ファンの熱心さによって劇中以上の精度でモデルガン化されたりしていました。
しかしリドリー・スコット自身はファンではないわけで、そのようなファンの熱に同調する事もなければ、また良い意味で裏切る事も出来なかった、と言えます。むしろブレランオタクの若手監督が指揮を執った方が良かったのかも。
本作の監督ドゥニ・ヴィルヌーヴは、前年に稀代の傑作SF「メッセージ」を撮りあげているのですが、今回はその作風が裏目に出ました。「メッセージ」はそもそも、今までのSF映画のセオリーを打ち崩す新しいタイプの作品であり、今までのSF映画に決別する意思を持っていたからこそ傑作になった。にも関わらずその同じ監督が、往年のハードSF映画であるブレランの続編を撮るというのは矛盾しています。尺が163分もあり、そこにおいてヴィルヌーヴ監督の静かで上品なスタイルは、眠気をもよおさせてしまうだけでした。