「ブラック企業から転じる人生が飛躍しすぎでは?」ちょっと今から仕事やめてくる 月野沙漠さんの映画レビュー(感想・評価)
ブラック企業から転じる人生が飛躍しすぎでは?
吉田鋼太郎演じる山上社長のパワハラがなかなかえげつなくて、主人公の青山隆に、なんで辞めないかな?と思い続けながら観ていた。小さな事に拘りすぎて、いつの間にかその小さな事が大きな物に感じてしまい、今その事を放り出して逃げたら一生負け犬になってしまう、そんな幻想に囚われるんだろうな。
この映画の主人公の勤める会社だって小さな会社の使い捨てみたいな営業マンだし、まだ若いし、独身だしで、辞めてフリーターになったところでなんの問題も無かった。ましてや死ぬより難しい決断では有り得なかった。でもそこが分からなくなってしまう程、刷り込みとかマインドコントロールされてるんだね。こういう刷り込みはブラック企業だけではなくて社会全体で行われている。まず、学校からしてそうだし、特に部活。国の経済発展のためには多少の落伍者(自殺者)が出ても仕方ないという姿勢があからさまだ。
黒木華演じる優秀な女先輩社員役の五十嵐も同様で、仕事のノルマを増やされようが、それをこなせなくても、怒られても内心でケロッとしていればいいのである。下手に責任感を持ってこなしてしまうから、更にノルマを課せられる。後輩の発注書に細工した動機が自分のノルマをこれ以上増やされたくないからというのは、単に自分の成績を上げたいと予想していた斜め上だったがw
福士蒼汰演じる山本の青山の行動の先読みが神がかっていて、この話をファンタジーにしてしまっている。ブラック企業による過労死や自殺が社会問題となっているこのご時世、もう少し現実味のあるストーリーにしないとメッセージが伝わらないのでは?会社を辞めて外国へボランティアに行くというのも、現実にブラックな労働環境に晒されている人には現実味が無さすぎると思う。
工藤阿須加と福士蒼汰の演技は良かったですよ^^
黒木華は好きな女優だけど、しっかり者の先輩社員というイメージじゃないかな?
観客を感動させるであろう逸話を話すことになる孤児院の院長役の小池栄子はミスキャストだと思う。意地悪な院長にしか見えなかったwもう少し穏やかで年配の人にすべき。