劇場公開日 2017年10月7日

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「【ディストピア感溢れる近未来の人心荒廃した東京で、幼少期からの屈託を抱えた二人の青年がボクシングに魅入られ必死に生きる姿を描き出した作品。設定、人間関係の描き方が秀逸である作品でもある。序章。】」あゝ、荒野 前篇 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【ディストピア感溢れる近未来の人心荒廃した東京で、幼少期からの屈託を抱えた二人の青年がボクシングに魅入られ必死に生きる姿を描き出した作品。設定、人間関係の描き方が秀逸である作品でもある。序章。】

2021年5月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

幸せ

ー これだけの作品であるので、内容は割愛。ー

■感想

1.作品時代設定の秀逸さ
 ・1966年刊行の寺山修司の原作を、2021年の東京・新宿に設定を変えた事。
 それにより、現在の日本が抱えている諸問題 ー 介護、自殺の増加、福島原発事故(今作では東都電力となっている)、自衛隊国防費 ー も作中に巧みに取り入れている点。

2.W主人公の正反対とも言える性格設定及び捨てられた親との関係性
 1)新次(菅田将暉):幼き頃、東京オリンピック競技場が建てられる前の団地で、両親と暮らすも自衛官だった父はpdsdにより縊死。母京子(木村多恵)は、幼き新次を孤児院に預け、消える。
  その後、新次は荒々しい性格ながらも、常に何かに屈託した生活を送る。

 2)健二(ヤン・イクチョン):韓国人である母と自衛官の父(モロ諸岡)との間に生を受けるが、母は韓国に戻り、父と暮らすも自衛官時代の4人の部下(含む新次の父)の自殺により、世間から糾弾され酒に溺れる父からの暴力に悩み、家を出る。
  吃音持ちだからか、伏し目がちで自信なさげに鬱鬱とした日々を送る。

3.作品構成の妙
 ・新次と健二の哀しき過去の、現代パートへの挿入のタイミング。
 例えて言えば、新次がぐれていた頃の、同じ孤児院で育った劉輝(小林且弥)に対する裕二(山田裕貴)の裏切りと、現代パートで二人が仲が良さそうにしている姿を新次が驚きの表情で見るシーンや、新次と健二が所属する事になった海洋拳闘クラブのオーナー、宮木社長(高橋和也)の秘書になっていた母京子とのデビュー戦での再会シーン。

 ・新次と同じく、3.11により母を身障者にされながら、母を見捨て東京に出て夜はデリヘル嬢、昼はラーメン屋で働く芳子(木下あかり)と新次との関係性の変遷。

<”どんなに辛い状況でも、時にブレながらも前を向いて生きる新次、健二、芳子を中心にした、人心荒廃した東京を舞台にした、壮大な物語。
 新次、健二がボクシングの面白さに魅入られていくプロセスも効果的に描かれている作品。打が、前編は未だ序章である・・。>

<2018年1月14日 様々な賞の受賞記念としての特別上映で、鑑賞>

<2021年5月 2日 別媒体にて再鑑賞>

NOBU