「歴史動いたな笑」あゝ、荒野 前篇 まつこさんの映画レビュー(感想・評価)
歴史動いたな笑
これはもう…私の映画史が変わる作品。
私のだけではなく日本の。日本映画の宝作品だな、これまで数々の何十年先にも残る名作が輩出されてきたと思うけどそこにラインナップされて問題無しですね。
青春ヒューマンストーリーというカテゴリーになるかと思えば社会派でもあり前衛的でもあり、大衆向けともとれるしサブカルチャーともとれるし、原作のおかげもあるかもですが、とても面白いんだけど色んな要素が詰まっている作品だった。
菅田将暉・ヤンイクチュン側の新宿での再生ストーリーだけではなく同じ新宿の別場所で行われている学生の反社会行動のストーリーも並行して進み、それが伏線のようになって後編で回収されて繋がっていきそう。
私単体から見た感想だと、青春・社会・人の闇・恋愛・再生・社会・芸術・オカルト的要素…自分の見たいものがギュって詰まっていて、更に大大大好きな「ボクシング」「学生運動」要素が主体で動く前編は、自分得でしか無くて興奮しっぱなしだった。これおかずにして白飯何杯いけるんだよとも考えた。観てる途中瞬き出来なく汗が止まらないし、いつも面白い映画やドラマを見るときはその現象に陥るけど、入り込んで一体化してた。
今回の菅田将暉は、好きな菅田将暉だった。全部好きだけど、「そこのみにて光輝く」側の菅田将暉だった。
やっぱどの役演じても、この人は生まれた時からこの人だったんだろうなと感じさせるそのキャラクターの生い立ちが滲み出る演技はいつも圧巻で周りや環境への溶け込み具合が半端無いし、自身特有の空気感や人柄も生かしていてどっか憎めない雰囲気も出てて素敵だなーと思っちゃう。
誰かを憎んでる時は本当に憎んでるんだなと思うし、誰かに情が湧いてる、誰かを本当に好きになっている、誰かをとても信用している、など、それぞれの感情が分かりやすく画面からも仕草からも表情からも伝わってきて全てが自然で。よくこんな難し過ぎることやっちゃえるよ天才かよ…と。
んで、こういう喋り方する人いるよな、こういう行動に出ちゃう人いるよな、とこっちに親近感を沸かせて説得力もあるし。
絶対に期待以上だし絶対に安っぽくならない。男版北島マヤだと思う笑。
ヤン・イクチュンも、自身も凄く良いし、菅田将暉とのバランスも無茶苦茶良かった。ボクシング映画って男と男の友情とかがよく描かれがちだけど今回も超大正解パターンだった。しかも後編の予告観たら…
こりゃあやばいね、後編は映画館の床ずぶ濡れか浸水か地盤沈下(?)が起こるか…何が言いたいかってーと、皆んなが皆んな、自分の有り余る水分を涙として放出しちゃうくらい感動しちゃうと思うなー笑。とても意外などんでん返しとかではなく、映画ドラマを多めに観てる人ならこの展開も読めてたなという展開ではあるけど、前編でのこの2人の男の築き始めた関係性があるから、もう困るぐらい情が移りまくっちゃってるし、結果「涙」になると思うなー笑。
そしてこの2人だけでなく、脇を固める大人たち、超最高…!ユースケサンタマリア、でんでん、高橋和也、モロ師岡、木下あかりや木村多江も、そして鈴木卓爾も笑、すんごくいい、普段から良いけど、この映画に出てその役をやってくれて有難うございますと言わざるを得ない。ユースケとでんでんとかこの映画に出なかったらと思うと冷や汗が出そうなくらいの人達だ。
そしてユースケの偉大さが改めて再認識されたね、役への入り込み方も気持ち良いけど、普段の気さくさとかユーモラスなところが演技なのかアドリブなのかもう境目が分からん笑。花とまではいかないけど、何か適当でいい加減な感じだけど、彼がいるだけで安心感で出て空気がすぐに柔らかくなる感じ。職場に1人はいて欲しい職場ピエロ的な立ち位置。人々が暮らす中でこういう人が重要だし、私がなりたい人物像の目標でもあるなと思った。作品内での、競馬好きなマスターがいるユースケ行きつけの飲み屋のシーンがあるけどここが好きな人はいっぱいいるんだろうな笑。
あと気になるのは山田裕貴。ミッキーマウスか一時の大杉漣ばりに、観る作品観る作品に出てくるけど何か凄くないか出演回数笑。ここ1ヶ月で5〜6本くらいの映画に出てドラマも常に2本くらい同時に出てて法律犯すんじゃないかぐらいの頻度で視界に入ってくる彼、ウケる笑。でも、あの顔と比べてのピュア過ぎる声質のギャップが結構好きだから…頑張って欲しい笑。(「となりの怪物くん」のヤマケン役をやる可能性が高いとネットで噂あるけど絶対そうして欲しい)
岸善幸監督も本当これまでなめててすみませんというか、土下座というか完敗というか…。昨年の「二重生活」を観て、期待値よりも観た後少しがっかりしたせいで今回もドキドキしながら観たけど終わった後は脱帽だったよ。前作はこんな良いキャスト揃えて面白いテーマ立ち上げたのにこういう感じかいと思ったけど「あゝ、荒野」は胸を張っての代表作だ。良い映画は、作った人も出演した人も関われて良かったと思うと思うし、観客も観客とて何もしてないのに何だか自分の経験値が上がったような感覚になるから偉大。関わった人・関わってない人、観た人・観てない人、に人間を二分割にしてしまう威力があると思う。素晴らしい映画の影響力は凄い。
そして極めつけは主題歌BRAHMANの「今夜」。映画の一部となってまとめあげてくれているし、決して癒し系ほっこりムービーではないこの157分の映画を観た観客をやさしく包み込んで心地良くしてくれる主題歌。もうサブタイトルはやさしさに包まれたならでいいんじゃないかな笑。
この映画観た人は帰りにiTunesで落として帰り道〜その後1週間ぐらいヘビロテして(そして聴きすぎて少し飽きて嫌いになるという黄金ルートを渡る)という末路になるでしょう。
また、勿論素晴らしい映画ではあるけど、とにかく、とにかく濡れ場が日活ロマンポルノかいと言わんばかりにコンスタントに乱入してくるから苦手な人は少し注意笑。前後編通して主要キャラひとりひとりにきちんと1回以上はその類のシーンがあるという丁寧さなので、満席の劇場じゃなければ最前列で観るのはあまりお勧め出来ません。体調と心情によってはポップコーンとコーラを吐いちゃうかもしれないから…吐いたら超面白いから私なら自慢するけども笑。
この映画は各界の映画賞を総ナメにして欲しいなあと心から願っています。
おすすめ作品です。
圧倒という言葉がぴったりの作品です!
映画にも、菅田くんの天才っぷりにも、圧倒ですよね…日本アカデミーの最優秀主演男優賞とったときはホッとしました。2017年度確実にナンバー1だったので。