劇場公開日 2016年10月29日

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「【”合唱で醸し出される美しき少年少女の和音が齎したモノ”今作は朝鮮戦争勃発により孤児になった少年少女に青年少尉が「児童合唱団」結成する事で笑顔を取り戻すヒューマンドラマである。】」戦場のメロディ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【”合唱で醸し出される美しき少年少女の和音が齎したモノ”今作は朝鮮戦争勃発により孤児になった少年少女に青年少尉が「児童合唱団」結成する事で笑顔を取り戻すヒューマンドラマである。】

2025年7月19日
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■朝鮮戦争勃発後の1952年。
 家族や多くの戦友を失ったハン・サンヨル少尉(イム・シワン)は、失意のまま最前線から釜山に転属となる。
 そこで戦争孤児の世話を任されると、児童合唱団を結成してボランティアのジュミ(コ・アソン)とともに彼らに歌を教え始める。

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・今作は「船上のピアニスト」と同様の、音楽を主軸とした反戦映画である。序盤は南北朝鮮の激しい戦闘シーンが描かれるが、徐々に戦闘シーンは少なくなり、逆に親を亡くした幼い少年少女が主役となっていく。

・特に、オ・ドング少年と妹のスンの兄妹が、父から教えられた北の曲を韓国軍の前で歌ってしまったが故に、父が殺されてしまい、スンが歌を歌えなくなってしまう姿は哀しい。

・ハン・サンヨル少尉とジュミが「児童合唱団」のオーディションをしたときの、オ・ドング少年のボーイソプラノの歌声は素晴らしい。
 そして、オ・ドング少年の父の密告により家族を殺されてしまった少年とが、且つては仲が良かったのに犬猿の仲になっている事を知っているハン・サンヨル少尉が二人にそれぞれ、”ダニー・ボーイ”と”アニー・ローリー”をそれぞれ歌わせて、二人の歌声が和音となり、美しい調べになるシーンも素晴らしい。
 そして、ハン・サンヨル少尉は言うのである。”違う歌を歌っても、和音となるのだ・・。”と。

・今作では孤児たちを使って金儲けをするや愚劣な金持ちのボンボンや彼に媚びへつらう片腕が鉤手になっているカルゴリ(イ・ヒジュン)が登場するが、ハン・サンヨル少尉が少女に手を出すボンボンを殴りつけ、更にはカルゴリとも乱闘になるが、海に落ちた彼をハン・サンヨル少尉が救った事から、カルゴリの善性が頭をもたげ、ボンボンに対し反旗を翻すシーンは印象的である。

■「児童合唱団」が戦地慰問をする事になり、ハン・サンヨル少尉が危険と判断し、解散を命じるシーンで、オ・ドング少年が”僕たちは歌いたい”と訴えて、多数決で存続が決まるシーンからの、戦地でオ・ドング少年と妹のスンの兄妹が迷子になってしまい、オ・ドング少年が北の兵士に撃たれてしまうシーン。
 オ・ドング少年は野戦病院のベッドで意識を失っているのだが、彼のために”父を殺したのは自分の歌だ”という自責の念から歌が歌えなくなっていた妹のスンが歌を歌い、その声を聴いた少年が薄く目を開けてから死んでしまうシーンは、可なり切ない。

<だが、兄を失ってもスンは歌い、合唱団も清らかな声で歌い続けるのである。その姿を別人のような笑顔で遠くで見ているカルゴリの姿も良かったな。
 そして、漸く朝鮮戦争は休戦を迎えるのである。
 今作は、朝鮮戦争勃発により孤児になった少年少女に青年少尉が「児童合唱団」結成する事で笑顔を取り戻すヒューマンドラマなのである。>

NOBU
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