HiGH&LOW THE RED RAIN : インタビュー
TAKAHIRO&登坂広臣、二人三脚で作り上げていった男の理想像
「雨宮兄弟はずっと“出る出る詐欺”だって言われてきたので…(笑)」――。“兄”TAKAHIROは冗談めかしながら語り、“弟”登坂広臣も「僕らは事前に、彼らの目的を知らされていたんですが(苦笑)」と申し訳なさそうにうなずく。そんな彼らの真の目的が明かされるチャンスが、ついにめぐってきた。(取材・文・写真/黒豆直樹)
EXILE HIROが総合プロデュースを務め、「EXILE」、「三代目 J Soul Brothers」、「劇団EXILE」など“EXILE TRIBE”のメンバーを中心にSNS、コミック、配信、オリジナルベストアルバム、連続ドラマ、劇場版、ライブと展開してきた「HiGH & LOW」プロジェクト。これまでシリーズにたびたび登場しながらも謎めいた存在であった、雨宮兄弟を中心に据えた「HiGH & LOW THE RED RAIN」が公開を迎える。
“詐欺”とは穏やかではないが、確かにこれまで、物語を彩ってきた「SWORD地区」の5つのチームや反社会勢力「九龍グループ」、海外からの新興勢力らが、この地区の覇権をめぐり死闘を繰り広げてきたのに対し、2人が演じる雨宮兄弟は「完全に別の軸で動いてきた」(登坂)こともあり、何者であるのかさえもほとんど描かれることはなかった。TAKAHIROは今回、ようやくその全貌が明らかになることに安堵の笑みを浮かべ、こう語る。
「これまで予告編にも出るわ、ドラマのオープニングのチーム紹介にも出るわで、ずっと詐欺だ詐欺だと言われ続けてきたので(笑)。僕らも、実際に製作陣から『たまに出てくる死神のような存在』と説明されていたんです。正直、こんなに早く僕らが中心の作品を映画でやらせていただけるとは思っていなかったのですが、ようやく謎が明かされるということで、楽しんで撮影できました」。
登坂も「ようやくです」という言葉にグッと力を込める。「TAKAHIROさんが話したように、ドラマに始まり、前回の劇場版でもなかなか出てこない(笑)。みなさんにとっては、本当に謎の存在だったと思いますが、今回見ていただければ、彼らがなぜ、ああやってSWORD地区に出現するようになったのか? “詐欺”の理由もわかっていただけるかと(笑)。これまで点で描かれていたものが、ようやく線として繋がる作品になっていると思います」。
2人がSWORD地区を訪れていた理由であり、ずっと探し続けていたのが、雨宮兄弟の長男・尊龍(たける)である。演じるのは、斎藤工。前作の最後の最後、サプライズで斎藤演じる尊龍が姿を見せると、劇場は驚きに包まれたが(※公開前の試写会では、このシーンはカットされていた)、TAKAHIROと登坂にとっても驚きのキャスティングだった。「兄貴、誰なんだろうね? と話していた(笑)」(TAKAHIRO)、「いろんな候補が挙がっているのは聞いていた」(登坂)とのことだが、当代きってのセクシー俳優が長兄に。TAKAHIROは兄・尊龍=斎藤の存在の大きさについてこう語る。
「“テレビで見ている人”という印象(笑)。それこそ“壁ドン”だったり、映像の世界でいろんな社会現象を作ってきた方ですし、色気の塊のようなイメージでした。決まったのは結構ギリギリのタイミングだったんですけど、聞いてからはもう、尊龍は工さん以外、考えられなくなりました。お会いする前からLINEで“雨宮兄弟”というグループを作ってやり取りさせていただいていたんですが、すごく丁寧で、尊敬できる人柄。先に僕らが現地入りして、撮影している間も写真をお送りしていたんです。そうしたら工さんは『弟たちを思いながら、日本で頑張ってます』と嬉しいメッセージを下さったり、“兄”に徹してくださっていました。実際にご一緒した時間は実はそんなになかったんですが、濃い時間を過ごせました」。
登坂は実は、斎藤が尊龍役に決定する前に顔を合わせる機会があり、以来、この「HiGH & LOW」プロジェクトについても話をするなど、親交を深めていたそう。
「ドラマ、映画、ライブなど、あらゆるエンタテインメントを含めての総合エンタテインメントプロジェクトとして『この時代に、こういうビッグプロジェクトを、日本映画を巻き込んでやられていることに感銘を受けています』とおっしゃってくださっていたんです。工さん自身も『雨宮兄弟の長男って誰なんでしょうね?』とおっしゃっていて。『僕もまだ知らないんです』と伝えていたのですが、そうしたら工さんに決まって。驚きました。工さんはすごく真摯に受け止めて、気合いを入れて作品に入ってきてくださったんです。もともと、僕らの中にも今回『引っ張らなければ!』という思いはあったのですが、工さんの姿勢、思いに触れて、グッと気持ちが引き締まるのを感じました」。
改めて、彼ら自身に雨宮兄弟の魅力を尋ねると、TAKAHIROからは「ぶれがないところ」という答えが。
「ひとつの目的を兄弟で共有しつつ、真っすぐに何も恐れずに正面から突っ込んでいくところは男らしい。その裏には実は、大きな哀しみを抱えていて、それを乗り越えて強くなっていく。“人間力”という点で、実は彼らは誰よりも人間臭いのかなと思います」。
登坂はTAKAHIROが演じる次男・雅貴、そして自身が演じる三男・広斗にパズルのピースのような関係を見出していた。
「HIROさん、脚本チームが雨宮兄弟に求めていたのは、100%のカッコいい男像なのかな、と。それは、2人が合わさることでそうなるという意味で、広斗にないものを雅貴が持っているし、逆もそう。ある意味で、男の理想像を2人で作り上げていくことを求められているのかなと感じていました」。
「EXILE」、「三代目 J Soul Brothers」のボーカルとして、歌を本業にしてきた2人。演技という部分にプレッシャーを感じながらも、思い切って臨めたのは、雅貴、広斗の個々のキャラクター、そして何より、2人の関係性が、普段の自分たちと近いものに設定されていたから。TAKAHIROが、雅貴そのままの“おちゃらけた雰囲気”全開で言う。
「役に対して『作りこむ』という作業は全くなく、そのまま役名とセリフだけを渡されて、あとは自由にやっていいという感じでした。キャラクターや枠にとらわれることなく自然に、ドキュメンタリーのようなイメージに近い感覚で臨めました。雅貴は人間そのもの…本能や感情、欲望をむき出し!そこはもう、全く役作りせずに挑みました(笑)。広斗に関しては、(登坂は)普段、あそこまでクールじゃないですね。『女性に興味はない』という雰囲気だけど、実は僕よりも大好きなので(笑)。そこだけは嘘をついているなと思います(笑)」。