幸せなひとりぼっちのレビュー・感想・評価
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偏屈爺さんと世界の片隅
主人公の爺さんはゴリゴリの保守だ。同じ地域、同じ職場で黙々と働き、大きな変化を好まず、愛する妻を亡くした今では世間と折り合いをつけることも面倒で、早くあの世に行きたいと願っている。
そんな偏屈爺が、隣人となった国際結婚の家族(妻がペルシャ系)と交流することで他者と繋がる喜びに目覚めていく。定番のパターンではあるが、爺さんが改心するわけでも人生観を覆されるでもなく、ひたすらに自分であり続けるのが面白い。
その過程で気づきを与えられるのは実は観客の方だ。爺さんは保守的であっても差別主義者ではない。アメリカのトランプ支持者は保守的な庶民層だと言われているが、保守的な庶民だからといって世界に対して自分を閉ざしているわけではないのである。
逆に言うと、これほどの偏屈爺さんでさえ価値観や文化の異なる他者にオープンでいられるのだ。これは世界の希望であり、日本の現状を思うと羨ましくもある。
ささやかだけれど、ぐっと胸に染み入ってくる
頑固な老人が、ささいなことをきっかけに周囲と心を通わせ————このプロットだけ見ると、過去の映画で何度も再利用されてきた内容のように思える。だが、この北欧からの贈り物には、単なる表層的では終わらない深みがあった。自ら「あの世」に旅立とうとするたび、走馬灯のように記憶をよぎる過去のエピソード。無骨な父親が一瞬だけ見せた優しさ、運命の女性と出会った瞬間の、世界の見え方がガラリと変わるほどの喜び、その一方で変わりゆく友情、大きなものを失った悲しみ。どれもが胸を締め付ける。そして喜びと悲しみの分だけ、観客はこの頑固じいさんのことを知り、彼への愛おしさを泉のように沸き起こさせていく。かくも共感を誘う物語の歩調と絶妙なユーモアが心地よく、押し付けがましさが全くない。また主人公が、けっして親切のためでなく、溜息まじりで目の前の事象を修理するたびに、人と人、心と心が繋がっていく過程も面白い。ささやかだけれど、とても心に染み入る名作だ。
気持ちのいい涙を流させてくれる人生賛歌fromスウェーデン。
原作もそれを基にした映画も世界中で愛される理由は、一重に、亡くなった最愛の妻の元に早く旅立ちたいのにその都度邪魔が入って旅立てない老人の、憎めないキャラクターに起因する。隣人の非常識な行いをいちいちチェックしては文句をつける傍らで、向かいに住むイラン人妻やゲイをカムアウトしたばかりに家を追い出された少年と交流してしまう寛容さが、主人公の独居老人、オーヴェにはあるからだ。辛い過去の思い出に引き摺られて度々自暴自棄になるオーヴェだが、寸前で思い止まらせるのは亡き妻が彼に残した、「今を楽しんで生きて!」という言葉が記憶の奥底に刷り込まれているせい。福祉大国、スウェーデンならではの実は国民に優しくない現実も覗かせつつ進む物語は、人生にはたくさんの悲しみをカバーして余りある出会いと感動があることを教えてくれる。悲観は時に滑稽なもの。そんな達観と随所に織り込まれたユーモアが、気持ちのいい涙を流させてくれる人生賛歌fromスウェーデンである。
知らない役者でも感動しますわ
やる事なす事固くるしいけど、芯は厚い人情派
原作はフレドリック・バックマンの『A Man Called Ove(邦題・幸せなひとりぼっち)』
ハンネス・ホルム監督。
【ストーリー】
オーヴェは地元でも有名な頑固爺さん。
半年前に妻ソーニャをガンで亡くし、長年勤めた職場を解雇され、さっさとこの世からおさらばしようと決める。
だが向かいに若い夫婦のイラン人一家が引っ越してきて、無意識ながら彼の自殺をことごとく失敗させてくる。
自殺を決めているのにご近所の見回り作業をつづけ、ゴミを仕分けし、無許可侵入してくる車を追い出す。
そうこうするうちにイラン人一家の母親パルヴァネとの理解が深まり、妊婦である彼女の手伝いに事あるごと駆り出されてしまう。
鉄道作業員の父と共に暮らし、父の教えでスウェーデンの自動車会社サーブを信奉し、鉄道作業員として長年生きてきたオーヴェ(ロルフ・ラッスゴード)。
周りとの悶着があるたびに、そうなってしまった理由と彼の人生が描かれます。
ただ嫌味な老人に見えた彼が、実は義理堅く人情家であると分かってくると、だんだん彼のことが好きになってしまうふしぎ。
青いスーツが似合い、奥さんも綺麗で、なんともヨーロッパ人だなあ。
舞台は風光明媚で音楽もおしゃれ、エピソードの説明もコミカルな味付けながらしっかりしてくれて、その上きっちり90分で終わらせる見事な編集。
ハリウッド・リメイクの『オットーという男』の後に見ましたが、多くの人がこちらに軍配をあげるのも納得の出来です。
どっちも面白いけど、あっちのねこもこっちのねこも可愛いんだから、両方見て損はないかと。
オットーと比べ
ひとりぼっちなんかじゃない!
心に沁みるわ〜 こんな映画大好きです
なんて愛おしい映画なんだろう。。。
またお気に入りが増えました。
去年トム・ハンクス主演でハリウッドリメイク版が公開されて観ましたが、先日このスウェーデンのオリジナルをWOWOWで観て,断トツこっちの方が良かったです。
なぜなら,主人公の過去が丁寧に描かれていて,子供時代の父子関係もとても良かったから。どうしてハリウッド版はこれを省いたのだろう? 年老いて偏屈になってしまった主人公の良心の部分である,過去の愛の記憶を描くのはとても必要なパートだと思う。
それにしても奥さんが素敵すぎる。
眩しいくらい美しくて,優しくて,輝いている。
彼女の前向きな生き方も素晴らしい。
主人公オーべの一生は、きっと幸せなものでした。
それは、全て人との出逢いにのよるもの。
愛ある人たちのお陰です。涙。
こっちの方が好き
後半からよかった、
オーベとソーニャのラブ・ストーリー
このスウェーデン版は素晴らしい。どこどこ大学の卒業証書、ではなくて、オーベはパルバネの強さと賢さを自分の目と頭でわかっている:君は子どもを既に二人生み三人目がもうすぐ生まれる。イランからスウェーデンにやってきて新しい言語も身につけた。それだけ素晴らしい君に車の運転ができない訳がない。
オーベはパルバネの夫のことを悪く言わないし、近所の人もオーベを気難しいと思っていない。几帳面できちっとしてるだけ。過去の辛い経験と生来の誠実で真面目な気質が作り上げた人なんだ。「・・・禁止」のプレートがやたら多い経緯もよくわかったし猫もすぐに家に入れて飼った。車とメカに詳しくて器用な人。若いときのオーベがとても素敵で赤い靴のソフィーは賢く魅力的。二人の身長差もソフィーの教師としての素晴らしさも全部、私達観客に示してもらった。冒頭のホームセンターでの買い物がソフィーのお墓に供える花でよかった。
車競争には笑えた。SAAB vs. Volvo はまだいい。そこにBMWとRenaultが参入したらもう世も末だとオーベは思ったんでしょう。どっしりした建築、家への愛、雪、朝食テーブルにもキャンドル、コーヒーが大事、南の国スペインへの憧れ、権威的な白シャツ野郎達、こういったことはスウェーデンが舞台だからこそ真実味がありました。見てよかったです。
ハートウォーミングってこういう事言うんだな
みんないい人
素敵な Sonja (ソーニャ)
オーヴェの奥さんのソーニャがとても快活で素敵な人。よくこんな貧乏青年に親切にしてくれるは、レストランで大胆にキスしたり。レストランのシーンいいですね~ きみが好きなものを注文できるようにと。泣ける。。
それだけでこの偏屈じいさんは充分幸せ。
ですよね~
だから余計にあの世に行きたくなるんだね。
いきなりリストラ。お父さんが事故死。鉄道関連会社に45年以上お勤め。
ガーデニング売り場のお姉さんがチクったのかも。59歳?いやいや、70歳でしょうよ。まっ、それはいいとして、イライラ加減が半端ありません。
こんなにイライラして、偏屈で、口も最悪。すぐ怒鳴る。でも、本当はお人好し。工作や修理が得意なのはわたしはダニエル・ブレイクと一緒でした。越してきたのはイランの家族。子供になつかれるのも一緒。不動産ブローカーや公共サービス(ホワイトカラー:白シャツ)への不満も溜め込んでいます。若いときからついてなかったから仕方ないですけど。
親父さんも頑固で几帳面で無口で不器用。SAABが大のお気に入り。大事な形見の腕時計。
有料特養施設のいけすかないちょび髭野郎。やっぱり私腹を肥やしていた。記者が暴いてくれて、スッキリ。
隣人同士のお付き合い。煩わしくて避けがちの現代人。いくら公共サービスや福祉が充実していても、寂しいですよね。隣人に恵まれて生涯を閉じたオーヴェはやっぱり幸せでした。
SAABはスウェーデンの車なんですね。知りませんでした。ボルボもですか。BMWは究極の裏切り。縦列駐車でぶつけてもボルボなら構わない。
親父ゆずりですね。
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