「一人暮らしになったとしても、それは孤独を意味するわけでは無いよ、と。眼を開ければ、貴方を気にかける人がいることにきっと気が付きますよ、とこの作品はそう語りかけてくるようです。」幸せなひとりぼっち もりのいぶきさんの映画レビュー(感想・評価)
一人暮らしになったとしても、それは孤独を意味するわけでは無いよ、と。眼を開ければ、貴方を気にかける人がいることにきっと気が付きますよ、とこの作品はそう語りかけてくるようです。
最近観た作品(「オットーという男」)が
実はリメイク作品だったと知りました。
スウェーデン映画は余り観た記憶が無いので
どういったものかと興味が涌いて鑑賞。
◇
最愛の奥さんを亡くしたオーベ。
この世に未練は無いと、ソーニャの元に行こうと
自殺を試みるのですが、上手く行きません。
首吊りに排気ガスに列車飛び込み、そして猟銃 …うーん
そんなオーベの家の隣に引っ越してきた家族。
夫婦と娘二人、4人家族のパルパネ一家。
旦那はどうにも頼りない。車の運転もヘタ。
奥さんは移民らしい。料理が上手。
小さい娘二人は可愛い盛り。
そしてソーニャのお腹には3人目がいます。
ひっそりと妻の後を追うつもりのオーベ。
そうと知ってか知らずか、
何かと隣の奥さんがオーベに声をかけてきます。
娘二人のお守りを頼まれたり
車の運転を教えてほしいと請われたり と
ゆっくりと自殺を図る暇の無いオーベ (・_・;
オーベの家の近くには、今は不仲となってしまったけれど
この団地に引っ越して来た頃からの友も住んでいる。
その家を手に入れようと、悪徳不動産の魔の手が伸びる。 …むむ。
パルパネ一家との交流を経て、不仲の原因は過去の自分にもあったと
そう気が付くオーベ。
#このままにしておけるものか と
旧友の立ち退きを阻止するべく、行動を開始するオーベ。
さあどうなる。 というお話。
実の父。奥さん。
今は居なくなってしまった大切な人たち。
彼らへの想いがどれだけ大事だったかを丁寧に描きながら
新しい隣人との
#新たに生まれる大切なもの
を描き出したとてもハートフルな作品でした。
「オットー」がきっかけでの鑑賞でしたが
こちらの作品も、とても良いですね。
観て良かった。うん。
◇
野暮とは思いつつ
「幸せな」と「オットー」の比較などを少々。
■「幸せな」では
オーベの少年期のエピソードが丁寧に描かれています。
特に「父」との関わり。
母を病気で亡くし、父との二人暮らしに。 そして、
事故により突然の一人暮らしへ。 激動の青年期。
そんな中での「ソーニャ」との出会い。それは
大事なものを失い続けたオーベに訪れた人生の分岐点。
大切なものが減り続けた中で、大事な人が増えたオーベの
喜びは、容易に想像ができます。
その最愛の妻を病気で失い、また訪れた喪失感と絶望。
「幸せな」のストーリーは、冒頭からオーベが妻を失った
事を明らかにしているのですが、過去のエピソードの丁寧な
振り返りによって、よりオーベに共感し易くなっています。
■「オットー」では
父との関わりは、余り詳しくは描かれず省略気味。 あらまぁ
一方、妻ソーニャとの過去のエピソードは「幸せな」とほぼ同じ
くらいの内容が描かれます。
ですが、この作品の始まりの時点では、
「ソーニャが故人であることが、はっきりとは描かれていない」 のです。
それが、小さいようで大きな違い の気がしました。
オットーの「過去から現在へ」 と至る内面の葛藤(成長?)の描写は
極力抑え気味にして、その分家を奪われそうな旧き友人を助けるという
エピソードに重点を置き、エンターテイメント的な演出で見せ場を作る
そんな演出をしているように感じられました。
■まとめ
ストーリーの骨子は変わらないのですが
制作した国の「お国柄」が出てるのかなぁ …と
そんな気もしました。
スウェーデン と アメリカ
サーブとボルボは シボレーとフォードに
トルコ移民は メキシコ移民に
※トルコ移民というと、パルパネさんは
クルド人の設定なのかなぁ…
(原作が気になってきました)
最後は観る側の好みの問題なのでしょうが
この作品で描かれる人物の心理描写の細やかさは
とても好きです。
◇最後に
お葬式。
"私の事を認めてくれた人だけを呼んで欲しい”
そう遺言に書き残していた主人公。
教会の礼拝堂。
入口付近まで弔問客で一杯になった様子が映る。
こんなにも沢山の人が惜しんでくれている。
”貴方の人生、捨てたものじゃないわ”
そんなソーニャの声が聞こえて来るような気がしました。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
訂正です。
>小さい娘二人は可愛い盛り。
>そしてソーニャのお腹には3人目がいます。
ソーニャでは無く、パルバネさんです @-@ ;
子育て幽霊の話になってしまう…
せうひとつ。パルパネさん。
トルコ移民ではなくイラン移民でした。・-・;
恥ずかしながら、まだ「オットーという男」を見逃したままなのですが、このレビューでいよいよ観ないとならないよなあ、というか思いを強くできました。ありがとうございます