「長屋の口うるさい頑固爺。」幸せなひとりぼっち 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
長屋の口うるさい頑固爺。
オーヴェの頑固爺っぷりは、江戸の長屋の小言ばっかり言ってる大家みたいだ。めんどくさいし、いちいち癪に障る。
だけど、言ってることは真っ当なことばかり。
理不尽でないことには、子供は敏感なものだ。だから懐く。猫まで懐く。
キツメの性格ながらも、それが表現の下手な思いやりだと気付くと、向かいの妊婦(名前はなんだったか?)も頼りだす。贔屓もしないかわりに偏見も持たない公平な考え方をするのだと知ればなおさらだ。
したいこと(言わないでおくけど)にも毎度毎度邪魔が入り、ドタバタを繰り返すうちに、周りが幸せになっていくストーリーはこちらまでほっこりさせられた。
要所要所で過去を振り返るシーンを差し込むのもタイミングが抜群だ。なによりも、死んだ妻ソーニャがかわいい。容姿はもとより、性格までも。ああ、この人が惚れたのだから、この頑固爺だっていい人なのだと、お墨付きがあるような気分で観ていられた。
ラストがまたいい。無理なく、背伸びなく、一人の老人の最期として穏やかな死に様に、拍手。
この映画や「シンプル・シモン」のように、スウェーデン映画には良作があるようだ。
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