「Ove 寡夫 無職 59歳」幸せなひとりぼっち everglazeさんの映画レビュー(感想・評価)
Ove 寡夫 無職 59歳
正直日本人目線だと79歳でもいいくらいの外見です。
どんなことでも筋を通さずにはいられない、融通がきかない、曲がったことは大嫌い。規則を守らない輩には容赦なく罵声を浴びせる。真っ向から正論を振りかざす。こういうオジサンは線なら定規を当てて引くだろうし、円ならコンパスで精確に描くだのだろう。
頑固オヤジには頑固になるだけの理由がある(から理解してあげないとダメなのよ)と聞いたことがあります。劇中では、理由というより主人公Oveのこれまでの人生を振り返る過程で、人格形成と元来の素質も見えてきます。
一人ずつ大切な人達に先立たれてしまう悲しさ。かなり不運の連続です。「一人で何でも出来ると思うな」と隣人に叱られるシーンがありますが、自分で何とか乗り越えていかねばと思わざるを得ない境遇だった感じがしました。車の進入禁止に特別やかましいのも、過去の事故が原因なのかな?と思いました。
後に妻となるSonjaがレストランで十分食事が出来るようにと、財布が淋しい自分はデート前に腹ごしらえ。初デートではカッコつけたがる男性が殆どだと思いますが、そんなことより彼女が美味しい食事をたらふく楽しめることを一番に考える優しさ。彼女の夢を叶える為に雨の中、学校に車椅子用のスロープを自作するOve。妻へのまっすぐで一途な深い愛情が伝わってきました。
妻の後を追うために、あの手この手で自殺を試みるのですが、その度に「邪魔」が入る所が面白いです。自分の血で家が汚れないようにビニールを張る細やかさ(^。^)。隣人達が彼を放っておかないのは、無愛想ながらも何だかんだ彼が常に正しいことをすると知っているからなのでしょう。Oveの性格なら自殺こそ許されない気もしましたが…。
コミュニティの大切さもそうですが、血の通っていないようなお役所的仕事も万国共通なのかなと思いました。
大笑いと涙、両方持っていかれた良作でした。それこそ人生なのかも知れません。オススメです。