「理想の続編」インクレディブル・ファミリー うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
理想の続編
もちろん面白いし、大満足です。でも、素直に楽しめないとすれば、いつもの考えすぎの虫が頭をよぎること。まぁ理屈なんか忘れて、ひと夏の思い出に、親しい人や家族と、一緒に映画館に出かけましょう。これほどふさわしい映画も他にないと思います。
小さいお子さんと一緒なら、吹き替え版の出来もいいです。まあ、めったにやってないけど、レアな字幕スーパー版を探し当てて見るもよし。前作をたとえ見ていないとしても、まったく問題ありません。
今回、個人的にツボだったのは、スーパー赤ちゃんのジャックジャック。ちゃんとプロの声優さんが声を当てているんですが、どう聞いても自然な赤ちゃんのうわ言のようなセリフばっかりで、これだけでも癒されます。この赤ちゃんのスーパーパワーが、コントロールできないだけにかえってボブを苦しめるトンデモな展開に。これは笑えます。
そしてお母さんのイラスティガールことヘレンが大活躍。クレバーで大胆、鮮やかなアクションは爽快で、見たことのない興奮を味わえます。
さて今回、思い至ったことは、「マイノリティに最大限の配慮をすることが、もはや大作映画には義務付けられる」「ディズニー映画は世界市場を当たり前に意識している」ということです。
パパは育児に専念し、ママがヒーロー活動をすることで一家を支えるという構造は、もはや強いだけのヒーローが必要とされていないことの表れでしょう。ティーンエイジャーのヴァイオレットが持つ悩みは、誰もが感じたことのある痛みで、スーパーヒーローをとても身近な存在に思うことが出来ます。そのほかのヒーロー軍団も、どちらかと言えば、自分のパワーを持て余し、世間からつま弾きにされている「マイノリティ」扱いで、とてもヒーローには見えません。
まるで「X-MEN」を思わせるミュータント軍団のようです。ヒーローが街を救っても、感謝されるどころか、その損害に人々の関心が向くという皮肉は、前作から踏襲されているものの、昨今、ヒーロー映画だらけになってしまった現状では、割と何度でも耳にする話題でもあります。
「スーパーマン」が起源だと思われるミスターインクレディブルも、今では当たり前のキャラクターとして受け入れられ、彼が、結婚してパパになったら?町を破壊して人々から嫌われたら?などと身近な笑いで楽しめましたが、今作ではその路線を拡大しながら、パワーアップし、新キャラの活躍も盛り込んだ、理想的な続編です。
つまり、ヒーロー映画のパロディ作品なのに、そのパロディのレベルをはるかに超えてしまったクオリティの高さに、もはや笑いすら起きずに、ただ「すげー」としか感想の出てこない、お行儀のいい映画になってしまったのです。
唯一不満があるとすれば、前作から続投し、役のイメージに合わなくなった綾瀬はるかさんぐらいですかね。
2018.8.5