「ちゃぶ台返し」カーズ クロスロード U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
ちゃぶ台返し
引退に向けての話。
そして、ちょっとあり得ない程の不正を正当化させたおぞましい作品。
話しの引っ張り方としては面白かった。
定番を採用しなかったとでも言おうか…ほぼ終盤まで「引退」を口にしない。
つまりはソコまで足掻くのだ。
物語の冒頭から引退臭しかせず…そうこうしてる内にレースが始まり「あれ?引退しないのかな?」と思った矢先の引退宣言。
なのだが…
腑に落ちない。
あんな価値観はありなのだろうか?
レースが始まり、何周かしてから後に選手が変わる。選手登録もしてない車が走り出す。
マックイーンの代わりに95番を貼り付けて、全く別の車が走り出す。
マックイーンの擬装をするでもなく、全くの別物として、だ。
そして、台詞でその行為を肯定するルールが発せられる。
で、その別物はレースの途中から参加し、失格になるでもなくトップでゴール。
拍手喝采…。
あまりに都合良すぎやしないかね?
身勝手すぎやしませんか?
それがアリなら、ピットインなんかしなくて良くないか?
ピット内で「早くしてくれ!」とか「先導車より前に出なきゃ!」とか言わなくて良くない?
ピットインしたら違う車が同じ番号背負って猛スピードでコースに戻ればいいんだから。
その間にゆっくりタイヤでも給油でも、エンジンの載せ替えでもなんでもすりゃいいじゃねえか。
番号さえ同じなら、何が走ってもいいルールって…どうなの、それ?
なんちゅうか、根底の世界観をちゃぶ台の如くひっくり返された感じしかしない。
で、まあ、まんまとピットにおさまり指示を出し始めるマックイーン。
…厚顔蕪村も甚だしい。
オマケに途中まで走ってたマックイーンにも優勝の権利はあるときたもんだ。
なんなの、それ?
なんで降って湧いたような耐久レースのルールが適用されんの?
ボクサーがラウンドの途中で引退宣言して、若いボクサーが代わりにリングに上がり、相手をボコボコに殴って、世界チャンピオンになりました。
で、そのボクサーはセコンドで檄を飛ばすわけだ…ああやれ、こうやれ、と。
この展開と何にも変わらん。
マラソンに置き換えてもいいよ。
どこがいい話しなんだ?
失格だったり、無効なら納得もするよ。
なんで絶賛しちゃうの?
なんで賞賛されちゃうの?
ルールだとするなら…今まで一台で走り抜いてきた誇りはどこいった?名誉よりも勝利が優先ですか?
誇りを捨てたヒーローには、なんの共感も持てません。
結局は冒頭から抱いてた「トレーナーになるんじゃないの?」って予感が当たるわけなのだが、その転機がどうにも気持ちが悪い。
途中参加で優勝かっさらわれて、周りは文句も言えずに退散とか…駄目だろ?
とまあ、そんな理不尽な脚本のおかげで、後半ゲンナリ…。
背景のCGはすこぶる綺麗。
レースのスピード感も抜群だった。
そして
松岡茉優さんが、ヒロインの声を当ててるとはエンドロールになるまで思いもしなかった。声優さんと肩を並べてなんの遜色もない!…素晴らしかった。