「脚本の作り込みが足りない」本能寺ホテル Nagaさんの映画レビュー(感想・評価)
脚本の作り込みが足りない
綾瀬はるか、は相変わらずかわいい。
でも・・・、この映画はどうなんだろう?
主人公の描き方が、綾瀬はるかに引きずられてしまった結果、一本の映画内で、主演の綾瀬はるかの性格が矛盾を起こしている。
そのため脚本の練り込み方、主人公の描き方が足りず、主人公ではなく綾瀬はるかの映画になってしまっているのが残念だ。
---------ここから先、ネタバレ--------
そもそも主人公は、人から言われたらそれに従ってしまうほど、我の弱い人間。
自己評価が低く、やりたいがあっても、他の人に勧められたらそれに従ってしまう。
それがコンプレックスという人物設定だ。
しかし、物語の端々に、いつもの(?)コミカルな綾瀬はるかに引っ張られてしまっている。
マイペースで、間違っている事に対してはしっかり間違っている、というような女性だ。
それをやっても許されてしまうような、かわいいけど、芯の強い女性、という描き方である。
例えば、信長との邂逅シーン。
茶入れを渡すよう強要する信長に対し、それを奪い取り商人に返してしまう。
一方で、婚約者の進める結婚式場などには異を唱える事はできない。
これを同一人物が本当にやったとしたら、その人はただの「変な人」である。
つまり、主人公の性格に一貫性がないのだ。
もちろん、映画によっては、シーンが進むにつれ性格が変わっていく、というものも少なくない。
だが、この映画では、シーンによってそれがばらついて配置されているので、主人公に感情移入することができない。
単に、綾瀬はるか、かわいいね、という映画でしかないのだ。
天真爛漫な綾瀬はるかを描きたいなら、この脚本では無理だろう。
もっと儚げで、抑えめな演技が求められる。
それを無理矢理、綾瀬はるかに寄せてしまっている。
その結果、矛盾を引き起こしているのである。
その分、信長の描き方はよく見えた。
最初は厳しいのだが、主人公の影響で昔の志を思い出し、性格が変わっていく。
荒唐無稽なファンタジックな設定だけに、物語の一貫性などにはもっと気を配って欲しかった。
ストーリーは単純で、三谷幸喜のようなコメディに寄せるなら、もっともっと脚本を作り込まなければならない。
逆に、もっと歴史に寄せるなら、しっかりとしたリアルな作りにしなければらなない。
両方が中途半端で、良いとこ取り使用とした結果、物語に矛盾が生じているのだろう。
そのため評価はせいぜい2、それもだいぶ甘く見てって感じだろう。
役者はそれぞれ良い演技をしていた。
綾瀬はるかは定番の安定感があり、堤真一は信長の不器用さをしっかり表現、濱田岳もイメージの違う森蘭丸を自分のキャラクターに引き寄せていた。
こうした役者の好演の分、加点といったところだろう。
それらを映画の作りが台無しにしてしまった感が否めない。
ついでに、そろそろ綾瀬はるか=天真爛漫、というのは無理があるのではないだろうか。
もっと違った演技させてやって、役の幅を広げさせてやれよって感じだ。