「人の世は変われども、人の夢心は変わらない」本能寺ホテル 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
人の世は変われども、人の夢心は変わらない
てっきり原作者も同じ…と思っていたら、“オリジナル脚本”。
何やら一悶着あったそうで。
まあそれはさておき、
このキャスト、この監督、歴史と絡めたこの題材、面白味ある題材を活かせなかった『プリンセストヨトミ』をどうしても思い浮かべてしまう。
なので今回も見る前はほとんど期待していなかったが、まあとても優れているとは言い難いが、あちらよりかは面白かった。
勤務先の倒産で無職になり、婚約者との結婚を決めた繭子。相手の親に挨拶する為京都を訪れ、とあるレトロなホテルに泊まる。
エレベーターに乗ると、何とタイムスリップ。
そこは謀反前日の本能寺で、織田信長と出会う…。
歴史×SF×コメディ。
ホテルのエレベーターが時を超えて戦国時代の本能寺と繋がっている設定がユニーク。
美術もロケも見事で、ちょっとした京都タイムトラベル観光。
同じ奇抜でシュールな設定ではあってもあちらより良かったのは、テーマやメッセージが一貫している点。
ネガティブニート女子の繭子。この不思議な体験、出会いで自分の人生を見つめ直す。
恐れられていた親方様と恐れていた家臣たち。繭子との奇妙な出会いによって、優しさや笑顔を取り戻す。
繭子の婚約者の父のスピーチも胸を打つ。
自分は何をしたいのか。
何故、出来ないと決め付けるのか。
人の世は変われども、人の夢心は変わらない。
臭い美辞麗句だが、ストレートに響く。
いかにも綾瀬はるからしい役で綾瀬はるかの魅力を振り撒くが、織田信長役の堤真一が見事。
堂々たるカリスマ性と威厳たっぷり。
心根は優しく穏やかで、誰よりも平穏な世を願っている。
繭子から自分の運命を聞かされても、逃げも隠れもしない。
織田信長の本当の人物像なんて誰にも分からないが、こうでもあったんじゃないかと納得させられるほど。
また、繭子が未来から来たという信じ難い話を聞かされても、相手の目を真っ直ぐ見据えて理解を示す。
出来過ぎだが、天下人とは、深い見識人。
胃痛持ちの小性・濱田岳、ホテルの秘密を知ってるような知らないような支配人・風間杜夫、婚約者の父役の近藤正臣らも好助演。
難点は、まあユニークな設定もあれだけど、
まず、歴史を変えるような事を言っちゃう繭子。これはどうなのかなぁ…。
ラスト、繭子をやっと理解して婚約を一旦白紙に戻すのも何だかご都合的と言うか…。
エレベーターでタイムスリップ出来る秘密も何だかちと釈然としない。
タイムスリップしてカルチャー・ギャップらしいカルチャー・ギャップもナシ。年月日を聞かされて、「ああ、やっぱり…」って(笑)
ギャーギャー騒ぐより、普通タイムスリップしたらこんなもんなのかもね。人は本当に驚いたら声もリアクションも無いって言うし。
…って言うか、普通タイムスリップなんてねーけど。
『プリンセストヨトミ』よりかは良かったけど、所々微妙な点も。
“原作騒動”も何だか凝りが残る。
映画に掛けて言うなら、これぞ“フジ映画の変”。
それから、『プリンセストヨトミ』と同じく、素晴らしく拝ませて頂きました。
ナイスおっぱい!