「衝撃のキャリー!」俺たちポップスター 曽羅密さんの映画レビュー(感想・評価)
衝撃のキャリー!
本作で制作・監督・脚本を兼ね、劇中も「スタイル・ボーイズ」を演じた3人は、普段でも「ザ・ロンリー・アイランド」というコメディトリオのようだ。
本職の笑いの方も有名歌手のパロディということなので、3人の地を活かして制作された映画になるのだろう。
アメリカの有名な歌手が多数カメオ出演していたり、本編中も音楽ネタが展開されたりと、本国のアメリカ人にとっては抱腹絶倒のたまらない映画なのかもしれない。
しかし筆者は元ネタがわからないので笑えないところも多く、本作は劇場パンフレットが制作されていないことが証明するように大方の日本人にとってもそこまで笑える作品ではないだろう。
実際、映画館に筆者を含めて5・6人はいただろうか?
笑えるところは下ネタぐらいしかないが、さすがは日本人、そこで笑いを堪えているのか、始めから終わりまで上映中クスリとも笑いが聞こえてこなかった。
筆者が高校生の時にチャーリー・シーン主演の『ホット・ショット』というコメディ映画があったが、よく知っている有名な映画をパロディにしているはずなのにさっぱり笑えなかった。
またアメリカで興行成績が良かったとして鳴り物入りで上映された『ウェインズ・ワールド』というコメディ映画もからっきしであった。
ロックネタなどがふんだんに取り込まれていたようだから方向性は本作に近いものがあるかもしれない。
「やべぇ、わかんねぇ」という会話がそこかしこで漏れるほどの意味不明っぷりで失笑以外の笑いがほぼ起きない映画館で妙に笑いころげていた中年のおばさんが相当目立っていた。
筆者やいっしょに観に行った友人たちは、「なんであいつここで受けてんだ?」と逆にそのおばさんの反応に笑ったり、作品自体のあまりのわからなさっぷりに顔を見合わせて笑っていたくらいで、、観賞後しばらくは誰かがつまらないことを言うと「ああ〜お前、それウェインズ〜」と発言するほど「ウェインズ」はつまらないものの代名詞になっていた。
本国アメリカでは成功を受けてすぐに続編の『ウェインズ・ワールド2』が制作され、アメリカの映画興行成績を伝えるTV番組でも全米で2位など上位に名前があった。
筆者は当然観に行くつもりもなかったが、日本では前作がこけたためか上映すらされなかった。
今もそうかわからないが、そもそも筆者が高校生の時はアメリカンジョークは大袈裟なだけでよくわからないと馬鹿にすることで笑いを誘うものでしかなかった。
ブレイクするまでのピコ太郎こと古坂大魔王の努力は尊敬に値するし賞賛されてしかるべきと思うが、正直なところ世界中で馬鹿受けした「PPAP」のどこが面白いのか未だによくわからない。
本作でも「ヤラれたビン・ラディン」や、ゲイの権利を主張する曲で「ゲイじゃない!」という歌詞を連発するとか、モナリザをゴミと揶揄するなど、笑いの取り方が直線的な印象を受ける。
他にも「ナニをしごけ!」という意味の「ターン・アップ・ザ・ビーフ!」を連発する曲があったが、日本の作品ではここまでくだらない歌詞を歌い続ける度胸はないだろうと思って感心した。
かといって日本の笑いが世界最高峰にあるとも全く思わない。要は笑いというのはその国の文化や言語に根ざして起るこものであり、韓国人のPSYを観て全く面白いと思わなくても仕方ないのである。
また、とても貫禄のある女性が登場して話し始めてやっとマライア・キャリーと判明した時は飲んでいたお茶を吹いた。
ちょうどタイムリーなことにTVでもそのお体付きのせいでツアーをキャンセルしたとかしないとか報道されていた。
昔に比べれば本作のような作品でも少しは楽しめるようになったと思う。
多少なりともアメリカの笑いのセンスが変わったのか、筆者の日本的な笑いのセンスが落ちたのかはよくわからない。
アメリカの音楽番組のパロディになるらしいが、ドキュメンタリー的に周辺の人物の発言を集めて主人公の人物像を浮かび上がらせる演出は面白かった。
またヒップホップ系の音楽はそれらしかったので良いのではないだろうか。
『ソーシャル・ネットワーク』や『TIME』『人生の特等席』を観て俳優というイメージしかなかったコック役のジャスティン・ティンバーレイクがいやに歌がうまいのでびっくりしたが、元々は歌手であることを初めて知った。
しかし、いかんせん全編を通じて何のパロディかわからない笑いが多いので筆者の理解度には限界がある。
当然ながら同じように元ネタを知らない人には映画館で観るのをお薦めしない。