「佐々部監督のご冥福をお祈りします」八重子のハミング kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
佐々部監督のご冥福をお祈りします
四度のガン手術を乗り越えた石崎誠吾(升毅)は、自分の病気のせいで妻・八重子(高橋洋子)が若年性アルツハイマーにかかったのだと責任を感じる。2人とも教師として働き、男先生、女先生と生徒たちから慕われていた。徐々に進行してゆく妻の介護を、家族や近所の人たち、そして教え子たちに支えられながら、自宅で続けてゆく誠吾。「やさしさの心って何?」という小さな講演会を通して、妻との思い出を語る・・・
実際に家族、周囲の人たちに認知症患者がいると、身につまされる思いになる。ガン患者とアルツハイマーの夫婦ってところで、自分の両親と同じなので因縁めいたものさえ感じてしまいました。徐々に進行する各シーンなどは、まさしくリアル。リアルすぎて、アラを探してしまうくらい。
ある日、八重子が徘徊して赤信号を渡ろうとしたとき、親切な女性が助けてくれるのだが、その女性が「野放しにしないでください」と忠告する。徘徊による行方不明者、そして死亡者はとても多いのですが、アルツハイマーの患者が家族にいる場合は、とにかく一人で外に出さないようにしなければならない。不思議なもので、内鍵は開けることができるのです。
映画を見る限り、夫・誠吾はいくつかの失敗をしているようにも思えます。まずは病気の疑いがあるのに、自ら仕事を選んでしまい、家で八重子を一人にしたこと。仕事に行くならおばあちゃんに頼むなり、なんらかの方法があったハズ。さらに、病院に連れていった様子がなく、友人でもある榎木医師(梅沢富美男)に相談しただけ。また、認知症に関する勉強を怠っていた・・・点などであろうか。
映像にはされてませんが、講演会で「大便を食べた」というエピソードも聞けた。あるある!です。自分の経験で言えば、さらに家中うんこだらけにしたことです。外で水を浴びせ、3時間かけて掃除させられました。もしかしたら、鉢植えをひっくり返して泥だらけにしたのは、うんこのメタファーだったかもしれませんが・・・
『半落ち』でも認知症の妻がテーマとなり、社会派要素満載でしたが、今作では誰にでも起こりうるリアルさが際立っています。65歳以上の高齢者の約7人に1人が認知症であるという現在、身近すぎる現実を見つめてみてはいかがでしょうか。
〈2017年8月映画館にて〉