「理想的な夫婦の形の一つかも」八重子のハミング 月野沙漠さんの映画レビュー(感想・評価)
理想的な夫婦の形の一つかも
一部、冷ややかな目で見ているような評価の人も目にしますが、登場人物がみんないい人ばかりなので、高齢化社会と介護を扱ったおとぎ話のように感じてしまう人もいるんだろうな。実話なんだそうですが。
家族、友人、知人、訪れる施設、飲食店、みないい人ばかりで、現実感が無いのかも?
昨今のニュースで介護殺人や介護施設の酷い状況、写真撮ったり食べ残したりするだけでネットを使って大騒ぎするラーメン屋とか、世知辛いニュースが多いので、この映画がおとぎ話に見えるのも仕方ないのかな。
八重子さんのご主人は、介護経験の講演を八重子さんがご存命の頃から行っていて、八重子さんと一緒に各地を回っていたそうです。晒し物にしていると家族から批判もあったようですが、そのことで地元では八重子さんは有名人で、葬儀の参列にはたくさんの人が訪れたそうです。思ったより世間は冷たくないなと思いましたね。
献身的な介護で若年性アルツハイマーとしては驚異的に長く生きられたとのこと。脳の機能は制限されていっても、気持ちは伝わるんでしょう。
試写会の会場は年配の人が多かったですがすすり泣く声があちこちから聞こえました。そして終了後、自然と起きた拍手。その後舞台挨拶に登壇された佐々部監督も喜んでおられました。
舞台挨拶では佐々部監督は自身の奥さんを亡くされた経験から、この映画を作ろうと決意されたこと、扱うテーマが重いことから大手の制作会社から協力を得られず、三年以上計画が頓挫しかけていたこと、自主映画ではなく自主的映画と呼んで欲しいということ、制作期間は13日間だったことなどを語られていました。
主演の升毅さんは芸能生活42年目にして初の主演映画だそうで、声を裏返らせて「やったぜ!」と叫んでおられたのが印象的。きっと舞台挨拶でもムードメーカーに務められてたんだろうなと思わせる舞台挨拶でした。
八重子役の高橋洋子さんは天然ボケな方のようで、自分のトークの番が来ても気が付かないなど、あれ?本当に痴呆なのでは?と思わせるボケぶりを発揮されて会場を和ませていました。
山野ホールの試写会にて。