「キャラクターデザインが変わっても問題なし。あの紅緒が帰ってくる。」劇場版 はいからさんが通る 前編 紅緒、花の17歳 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
キャラクターデザインが変わっても問題なし。あの紅緒が帰ってくる。
昭和世代にはテッパンストーリーだが、まだ若い"平成女子"にとっても、快活で自分で自分の道を切り拓いていく主人公・花村紅緒(べにお)の乙女心に共感するはず。
1年に100本以上の劇場アニメが公開される近年にあっては、原作ネタ切れは深刻である。そんな中で古典的な名作を甦らせる企画は、予算とスタッフさえ揃えば無敵である。素材が優秀なのだから。
1975~77年に「週刊少女フレンド」で連載され、テレビアニメ、実写ドラマ・映画化もされてきた大和和紀による同名コミックを、前後編で再アニメ化。しかもワーナーブラザース映画である。半端なリメイクではない。
大正デモクラシーのさなか、女性の権利を訴えた平塚雷鳥が登場。名言"元始、女性は実に太陽であった。・・・今、女性は月である…」は、近代日本のフェニズムの原点である。"良妻賢母"を育てるという女学院の既成概念にとらわれない新女性="大正オトメ"(はいからさん)を地で行く、紅緒の勉学・仕事・恋愛を描くコメディである。
原作からキャラクターデザインが変わり、不安がよぎるものの、それを忘れさせてくれる出来栄え。ドジだけど、とにかく可愛い、あの紅緒が帰ってくる。蘭丸や冬星、ばあや、飼い犬の天丸・地丸も健在だ。
喧嘩っ早く、剣道の心得があり、酒乱のじゃじゃ馬娘の紅緒と、伊集院忍少尉との出逢い。どんな粗相をしでかしても、それを優しく包み込む少尉の懐の広さに、徐々に恋心が芽生えていく。
前篇は、シベリアで行方不明になる少尉と、それを追いかけて満州に向かう紅緒のエピソードまで。1時間半という尺の中にあらゆる名エピソードが詰め込まれているので、展開が早すぎる部分もあるが、それはそれ。改めて思い出して、懐かしいノスタルジーに浸る。
来年公開の後篇~エンディングは、原作以外ではなかなか、ちゃんと描かれてこなかったので、今回のアニメ化は非常に期待できる。
ちなみに、花村紅緒役の声優・早見沙織が歌う、主題歌「夢の果てまで」が、竹内まりやの書き下ろしというのがベストマッチ。よくよく考えてみたら、竹内まりやの名曲に登場する女性たちは、いつも紅緒のように天真爛漫ながらも、強い自分を持ち魅力的だ。この曲も、とてもいい。
(2017/11/11 /TOHOシネマズ上野/ビスタ)