「最後のセリフがすべて」忍びの国 woinaryさんの映画レビュー(感想・評価)
最後のセリフがすべて
日置大膳の最後のセリフ、「今更、人でなしが人になったつもりか」、が全て。「今更」はなかったかな?
あまりに薄っぺらな心変わりに呆れました。これなら、無門を貫いて欲しかった。なんとなくいい人で終わらざる得なかったあたりで、所詮アイドル映画なのかと落胆。孤狼にも彼らなりの考えがあるだろうに。
子供を育てたことについて。
無門は、自分では気づいていませんでしたが、お国の為に生きていたので、
彼女を失い自分の存在が揺らいだのではないでしょうか。いい人になったと言うよりは、生きていくためにあの少年が必要だったのではないかと、私は解釈しています。
原作を見てませんが、そちらを見ればもしかしたら腑に落ちるのかもしれません。ただ、すみませんがあの映画だけでそこまで感じとれなくて申し訳ありません。ただ、尺がちょっと足りない気はしました。
この監督は「のぼうの城」の監督だそうで、あちらも最後腑に落ちなかったので、合わないのかもしれませんね。
最後に演技は主役始め素晴らしかったと思います。特に、信雄の吐露に北畠旧臣を含む家臣達が雄叫びをあげるシーンが好きです。
何故人でなしが人に変わったか。
上忍である平兵衛と違い、父母も真の名もない道具でしかない下忍の無門。
使い捨てである存在の中で必死に身につけた生きる術が他人のも自分の命も軽く見る事。
モノトーンの無門の世界を変えたのは誰か。
多分woinaryさんをはじめ人々はそれらの心の引っ掛かりに向き合う勇気がなく、今は変な映画と捉える事で自分の価値観を揺らがせるものから自分を守っているのでしょう。この映画の隠れた牙に気づいた時、現代の政治のリーダー達に、自分に相通じるものを感じるのです。それに気づけるのは2回、3回見てからです。この映画はそれほど監督の術(伏線)が複雑なのです。
いえいえ、woinaryさんはちゃんとご覧になっていると思います。
虎狼の族には虎狼の事情があるとはまさにそうで、京に近く住む彼等は、力のある公家や武家に便利に使われることで一族を維持していた訳で、あの強欲そうなおじさんたちにも、そうやらざるを得ない事情があった訳です。
平兵衛はシステムそのものに疑問を持ってしまったんでしょうね。
個人の感想ですから。偏見と思うのも自由です。嫌なものを見に行くほど暇ではないですよ。
私は無門に連続性を感じなかった。それだけです。いい人も人も同じですよ。
無門はいい人になったのではなく
「人」になったのだと思いますよ。
人でなしが人になった、そのままだと思います。
大切なひとを失った悲しみや、憎しみを乗り越えて、人になり、人の子の親になる。
その人に育てられた子が、また人を育てる。
そうやって現代に「つない」でいるのです。
エンドロールに流れる曲の曲名が「つなぐ」です。
所詮アイドル映画…というところに、最初から偏見が透けて見えますね。