「90年代アクションをリアルで体験してきたおっさんは本作をこう見た。」ナイスガイズ! しんざんさんの映画レビュー(感想・評価)
90年代アクションをリアルで体験してきたおっさんは本作をこう見た。
シェーン・ブラック
この名前を聞いて「アイアンマン3」を思い浮かべるのは今の映画ファン。
おっさんは、というと、言わずもがなの、バディ・ムービーの傑作「リーサル・ウェポン」の脚本家。
しんざん的には、というと、ブルース・ウィリス、トニー・スコットの大傑作「ラスト・ボーイスカウト」の脚本家。
そしてシュワルツェネッガー、ジョン・マクティアナンの、最後のひねりっ屁な傑作「ラスト・アクション・ヒーロー」の脚本家。
その脚本家が、いまをときめくライアン・ゴズリング、今は落ちぶれラッセル・クロウを主演にバディ・ムービーを撮ったという。
ライアン・ゴズリングはあっちの映画もあるが、しんざん的にはまずこっちである。
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「ナイスガイズ!」
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オープニング。いきなりのクルマが家屋に突っ込む。セクシー美女が死ぬ。
序盤から全編、シェーン・ブラック自身の、最高だったころのセルフ・オマージュ、パロディが続いて楽しい。主人公が探偵で、娘とのやり取りはまさしく「ラスト・ボーイスカウト」だし、ゴズリングの、夢の中は「ラスト・アクション・ヒーロー」のアニメとの共演を彷彿させる。
だが、だがしかし。
では本作が面白かったかというと、そうでもない。
排気ガスによる大気汚染、デトロイトの自動車産業の衰退を暗示させる展開、ポルノ業界の繁栄など、70年代の時代の絵作りにはスキがない。物語や設定は確かに楽しい。
だが上滑りのギャグと、スローなアクションのせいで、ノリを殺す。
ゴズリングは喧嘩の弱い探偵という設定だが、それとトロいアクションとは別の話だ。
さらに、悪役がなんだか時代に翻弄されたかのような動機の事件ゆえ、鑑賞後すっきりしない。体が90年代アクションに対して、悪役にそんな妙な今風な味付けをしてもらっても困るのだ。
もっといけないのは、散々ポルノビデオを事件のカギとして引っ張っておいて、それを見せることなくただのマクガフィンにとどめておくとは、どこが90年代風や、という。
そこはエンドロールで見せろと。
追記
ライアン・ゴズリング
「ドライヴ」でも思ったが、クラシックな顔立ちが本作にはピッタリ。ラッセル・クロウも醜い腹がイイ。
だが、当時の作品群を知っているものにとってみると、この名優二人を使って「90年代アクションのパロディ」に終わってしまっていることはとても悲しいのである。