「奥田民生じゃないボーイは狂わせガール見てるだけでいいや」奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
奥田民生じゃないボーイは狂わせガール見てるだけでいいや
奥田民生にライフスタイル誌業界。
自分には全く無縁な二つ。
そもそもそういう系列の雑誌は読まないし、奥田民生の名や曲も聴けば知ってるけど…、まあそんなレベル。
だから本作を見て面白さが分かるのかなぁと思ったけど、それはそれ、これはこれ。
“奥田民生になりたいボーイ”は絶対必要不可欠な要素には思わなかったけど、“出会う男すべて狂わせるガール”にホント狂わせられっ放しのラブ・コメディ。
とにかく本作は、水原希子に尽きる。
世間じゃ尋常じゃない嫌われ&叩かれっぷり。
「ブス!」「性格悪そう」「大嫌いッ!」はもはや彼女のキャッチコピー。何をやってもアンチ派から“支持”。
映画がヒットしなかったのも水原希子が出てるからなんて言われる始末…。
果たしてそれはちゃんと作品を見た上で言ってるのか疑いたくなるが、本作に於ける水原希子の魅力&存在感は見事であった。
決してズバ抜けた才能を持つ女優ではないが、時々光る時がある。
デビュー作の『ノルウェイの森』、『ヘルタースケルター』は出番はそれほど多くなかったがあるシーンでは沢尻エリカを圧倒し、本作は間違いなく代表作になるだろう。
演じる美人ファッションプレス(って言うか、ファッションプレスって何だ??)のあかり。
この魔性の女っぷりは、計算か、天然か、地か。
小悪魔のようであり、強か。
ちょっとオツムが弱そうに見えて、デキる女。
ツンデレのようであり、かまってちゃんであり、実は世渡り上手で、それがまた男心をくすぐる。
モデルでもあるので、着こなすファッションはどれもこれも見事に合う。
あのピチピチジーンズのヒップは男なら誰でもクギ付け必至!
そんで、チュッチュッチュッチュッチュッチュッチュッチュッしまくり。
しかも一つ一つが結構激しいディープで、よくここまでエロく大胆にやったもんだ。
男ってやっぱこういう魅力やギャップに弱いんかね。
また、これまでクールなイメージだった水原希子の新たな一面も見れて、これもまたギャップであった。
実質主人公は妻夫木聡演じるコーロキ。
妻夫木のヘタレ男子っぷりがもう鉄板。見てて(褒め言葉で)情けないくらい。
にしても、一癖二癖三癖ある登場人物たち。
問題児ライターのリリー・フランキーはマジでイラつかせるし、頼りになる先輩・新井浩文&尊敬出来る上司・松尾スズキは実は…。
水原希子演じるあかりが“狂わせガール”なら、安藤サクラ演じるコラムニストもある意味そう。超奇人変人だが、このキャラ嫌いじゃない。
実名出しのサブカルが楽しい。
馴染み薄の奥田民生だが、コーロキの心情とリンクする曲の数々は魅力。
大根仁監督はこういうジャンルは十八番だね。
あかりの影に一人、二人、男の気配が。
コーロキの恋の行方は…?
この結末はまさかの展開。
魔性の女と翻弄された男たちって、怖っ…。
単なる快テンポのラブコメってだけじゃなく、しっかりコーロキの成長や仕事への取り組みも描かれていたのも良かった。
ある時コーロキは、あかりと京都旅行を計画。仕事も余裕で終われる筈だったが…、例のコラムニストの原稿が届かない。(〆切遅れ常習犯)
あかりとのイチャイチャか、仕事か。
コーロキが優先したのは…、これは間違っていない。
それが、大人だ。
相手の事も勿論大事だけど、それでワガママ言うんだったら、自己チューで理解が無いとしか思えない。
ラスト、まあ色々ひと騒動あって、コーロキはそれなりの“大人”に。
端から見れば、憧れていた奥田民生みたいな着飾らないカッコいい大人。
が、本人の胸中は…。
恋に狂い、仕事をし、憧れの奥田民生には程遠い。
でもそのがむしゃらが、憧れとはまるで違うけど、あれはあれで一生懸命頑張ってた。
あの頃、俺は、カッコ悪いけど、民生だったんだ…。
意外や余韻残る終わり方でもあった。
男を虜にする“狂わせガール”。
もし自分だったら、付き合うのは勘弁、見て目の保養にするだけでいいや。
身も心も持たなそう…。