「落語に通ずる温もり」続・深夜食堂 全竜(3代目)さんの映画レビュー(感想・評価)
落語に通ずる温もり
大都会・東京の片隅で、夜の12時から店を開き、客の注文ならば何でもこしらえる大将(小林薫)の流儀に惹かれ通い詰める人々の織り成す交流を描いた人情噺。
『孤独のグルメ』と並び、原作もドラマも大好きなシリーズである。
ドラマは地上波ではなくなったのが残念やけど、待望の映画版第2作が封切りされ、早速、劇場に向かった。
映画化と云えども、力まず従来通り、オムニバス型式で進み、いつもの様に家で気楽に観る了見で向き合え、ホロリと泣けるのが、今シリーズの魅力と云えよう。
今回もコスプレ的趣味で私服に喪服を着る女の編集者の皮肉めいた恋愛を綴った《焼肉定食》、
子離れできない蕎麦屋の女将・キムラ緑子と後継ぎの息子・池松壮亮の親子関係を描いた《焼きうどん》、
息子と名乗る男のオレオレ詐欺に騙され、博多から上京した老女をみんなで面倒を見る《豚汁定食》の三篇。
各々、いちげんさんの頼んだ料理に因んだ悲喜こもごもの人間模様に、ゲイバーのマダム(綾田俊樹)、ヤクザの兄貴(松重豊)、お茶漬けシスターズ、そして、交番のオダギリジョー巡査etc. お馴染みのメンバーが集い、人情の深味を堪能させてくれる親しみやすさは、映画と云うより落語に通ずる心地好さかもしれない。
特に、第3部のエピソードでは、前回の映画版で料理人に憧れ奮起した多部未華子が御婆さんを最も心配し、活躍しており、映画ならではの繋がりがキチンと出来ていたのが、ファンとして嬉しく涙を誘った。
歳を取ると、どんどん辛い人生ばかりで心が折れそうになることばかりやけど、
「まだまだ此の世の中、棄てたモンじゃないんだよ」
カウンター越しにマスターに優しく肩を叩かれ、瓶ビールを勧められた様な気分だったと云うのは、チョッと大袈裟だろうか。
今年の5月に長期研修で、東京へ行った時、《めしや》の様な小粋なお店を探したかったけど、根が意気地無しゆえ、恐くて出来やしなかったのを今でも大いに悔やんでいる。
今年が終わる前に再びチャレンジしてみたいなと、涙を拭きながら、想った。
では、最後に短歌を一首
『湯気に添う 吐息の向こう 通り雨 夜更けの暖簾 縁は集う』
by全竜