「この国が忘れかけているもの」相棒 劇場版IV 首都クライシス 人質は50万人!特命係 最後の決断 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
この国が忘れかけているもの
「相棒」劇場版シリーズ第4作。
ノベライズは既読です。
国際犯罪組織"バーズ"のリーダー、レイブンが企む首都壊滅テロに、警視庁特命係の杉下右京と冠城亘が挑む!
事件の裏側には、日本と云う国に見捨てられた者たちの抱える、複雑で痛切な想いが秘められていた…
劇場版と云うことでストーリーには結構なスケール感があるのに、それをどこかスタッフが履き違えていると云うか、活かし切れていないんじゃないかなと思いました。
クライマックスのパレードのシーンは、北九州市の大通りを封鎖して撮影されているだけあって、とても大掛かりで迫力がありました。最初の劇場版のマラソン大会の描写に似て、スクリーンにはめちゃくちゃ映えますが、言ってみればただ大勢の人がいて、歓声を挙げているだけ…
せっかく首都壊滅レベルのテロ事件を題材にしているんだから、ビルが爆破されるとか、群衆がパニックになるとかしてもいいような気がしました。でも右京さんがいれば、トリックや手口やら何から何まで暴いてしまうので、大規模テロを起こすのは至難の業。致し方無いのかもしれません。もし爆発しちゃったら「右京さんどうしたの?」ってなりそう(笑)。
和泉聖治監督から橋本一監督に替わったからなのか、アクション描写が増えたような気がしました。
右京さんと冠城くんが犯人グループの一味である北村一輝と格闘!―右京さんの無敵ぶりは相変わらずでした。冠城くんもなかなかどうしてできる男でした。元法務省官僚なのによく頑張りました。警察学校でちゃんと学んだんだなぁ…
イタミンや芹沢くんが犯人と戦うシーンもありました!―連ドラでは血まみれで戦うと云うことはあまり無いので、とても新鮮だったし、何より観応えがありました。
真犯人の志の根底を成す考え方が、「機動警察パトレイバー2 the movie」で発生する仮想戦争テロ事件の首謀者の思想と似通っているところがあるような気がしました。目的のためならば、自らの命を犠牲にすることさえ厭わない犯人を、右京さんが文字通り命を懸けて守りました…
拘置所で静かに、かつ渾身の想いを籠めて犯人に語り掛ける言葉に涙を禁じえませんでした。将来、犯人が憂いているような恐るべき未来が待っていたとしても、そのために今を生きる我々には、いったい何ができるのか、はたまた何をすべきなのか、痛切に問い掛けて来る作品だなと思いました。
※鑑賞記録
2017/09/04:レンタルDVD
2018/03/21:テレビ放映
2019/03/24:日曜プライム
2021/01/06:テレビ放映
※リライト(2021/01/07)