「素晴らしいファイナルでした」闇金ウシジマくん ザ・ファイナル ch229さんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしいファイナルでした
ウシジマくんの醍醐味といえば、クズのような債権者と容赦ないウシジマくんとの戦いですよね!
ふつうの映画なら例えばダメな奴も改心したことで前よりも幸せになりました!というような救いを描くことでめでたしめでたし、となるわけですが、ウシジマくんではそうはいきません。
救いがないわけではないのですが、1000万円溶かして5円戻ってきたくらいの、ささやかすぎて逆に惨めさを強調するかのようなシビアなバランス感覚こそが真骨頂だと、わたくしは思うわけであります!
またその債権者のクズっぷりといえば、ちょっとだけ身に覚えがあることだったり、自分もどこかがタガが外れていればこうなっていたかもしれないなと思うほどにリアルなもので、他人事とは思えないところがあったりします。
善人は食い物にされるし出る杭は打たれる、そういう現実世界の厳しさというものをストレートに突きつけてくる怖さ、これはもう新しいスタイルのホラー映画に分類するべきかもしれません。
生きていると自分は損な役回りばかりで、もっとうまくやってる人たちがいるんだろうと魔が差すこともありますが、地道にやっていて良かったんだ、と思えるところに染み入る爽快感があるわけです。
そんなウシジマくんの実写作品もこのファイナルで最後ということですが、今回はいつもとはちょっと趣が違います。
少年漫画では主人公になるようなタイプのお花畑キャラ、竹本。
少年漫画なら少しずつ成長してヒーローになるようなタイプのこの竹本、ウシジマくんの同級生ですがこの世界ではお人好しすぎて落ちぶれに落ちて、貧困ビジネスのカモにされてしまいます。
そんななか、善意の輪が通じた人がひとりだけ居ましたが最終的には案の定、全ての負債を背負いもっとヤバい仕事に売られていきます。
ここでウシジマくんは悩み迷い葛藤します。
ファイナルではこれまでのウシジマくんが描いてきたリアルな厳しさ世知辛さに対して、そうはいっても少しずつでも変えていかなければいけないんじゃないか?適合することよりも竹本のように少しずつでも善意の輪を拡げていくことは尊いことなんじゃないか?という、これまでのウシジマくんシリーズに対するアンチテーゼが突き付けられます。
お前ら厳しい世界の映画観て喜んでるけど、そんな厳しい世界のままで本当にいいのか?と観る者に問いかけてきます。
ウシジマくんがこれまで一貫してきた価値観をひっくり返してきたわけで、いつものウシジマくんを期待していた人ほど、そのメッセージを重く感じることでしょう。
この後ウシジマくんは自分の生き方に疑問を感じて、仕事へのスタンスが変わるかもしれません。
あるいは変わらずこれからも容赦なくやっていくのかもしれません。
もしその後のウシジマくんを描くとしたら、その回答を出してしまうことになるので、もう続きは作れないですね。
その答えを見つけるのは我々観客に委ねられたからです。
だからこれでウシジマくんは完結し、完成しました。
見事なファイナルだったと思います。
ウシジマと茜が大好きだったわたくし、もう観れなくなるのは寂しいですね。
でも、もし続編を作られたら大きく失望することでしょう。
スタッフのみなさま、ありがとうございました!