「わかりやすい構造だが、安っぽい結論ではない」闇金ウシジマくん ザ・ファイナル ナブラさんの映画レビュー(感想・評価)
わかりやすい構造だが、安っぽい結論ではない
ウシジマくんシリーズはドラマ、映画含め全て観ており、大好きなシリーズの為、終わってしまうのは本当に残念です。パート3は対比構造的な作りで非常に映画として優れた作品でしたが、今作は構造的には案外単純です。ウシジマくんシリーズでは本当に珍しい善意の塊のような丑嶋の旧友、竹本をある経緯から追い詰めざるを得なくなった丑嶋が闇金業務をこなす内に諦めてしまった「人の内に秘めたる善意」について葛藤するという感じです。ベタ中のベタではありますが、ウシジマくんシリーズを締めくくるにはぴったりのテーマではあります。
まず、今作は丑嶋を中心に話が進むので原作含めシリーズのファンには嬉しいポイントだと思います。過去シリーズには本当にちょっとしか出ないなんてことも結構あったので、丑嶋の過去まで掘り下げられ、観ていて「あぁ本当に終わるんだな」と実感させられました。あと、ウシジマくんシリーズは本当にキャスティングが上手い。有名俳優に頼らず、役とのマッチングが取れた配役で、特に丑嶋少年を演じた狩野見くんの演技は素晴らしいです。また、ラストらしくカウカウファイナンスの追い詰められ具合というのも高評価です。八嶋智人さん演じる都陰に間接的に、鰐戸兄弟に直接的に追い詰められる様は手に汗握るものでした。そして、ラストシーンの間。これは本当によかった。邦画であの演出が出来る作品は本当に少ないです。ヒットシリーズだからこそ出来たのでしょう。ヒットしても観客に媚びず、こういった伝わりづらい演出も逃げずにできるのが、このシリーズの本当にいいところです。旧友を追い詰めたくない、あいつの善意を信じたいという気持ちと仕事上、そういった甘さを見せられないという気持ちの葛藤を表す素晴らしい演出でした。このラストシーンで一気に評価が上がりました。
本当に素晴らしい作品なのですが、一点だけ減点ポイントを上げるとしたら、ラストって言う割にカウカウファイナンスが追い詰められてから案外あっさりなんとかなっちゃったなっていうところです。
今作はウシジマくんシリーズの締めくくりとして本当に素晴らしい作品でした。終わってしまうのは本当に残念でしたが、映画がヒットすればまだ何かあるかもしれない!ということで劇場での観賞をオススメします、