「.」X-コンタクト 瀬雨伊府 琴さんの映画レビュー(感想・評価)
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自宅(CS放送)にて鑑賞。原題"Harbinger Down"。舞台を南極から北極に移し、同化から寄生に変更した見紛う事無きJ.カーペンターの『遊星からの物体X('82)』の焼き直し作。終始濁った画面で、触手様のが光ったりはすれど、鮮やかな色調の物は殆ど写らない。クマムシからと云う設定はユニークだが、全体像が掴み難いクリーチャーにセンスが感じられず、動きもぎこちない。カルト作に挑戦する意欲は買うが、暗い画面が多い上、カメラワークも拙く、魅力が乏しい演者陣も含め、失敗作と云わざるをえない。45/100点。
・冒頭に表示される「1982年6月25日」とは『遊星からの物体X('82)』が全米で公開された日付である。亦、「北極圏上空 北緯58.122° 西経178.603°」と云う座標軸はベーリング海上では在るものの、厳密には北極圏ではない。亦、件の作が火炎放射器にてクリーチャーを鎮圧するのに対し、本作では液体窒素がその役を担っている。
・目指すべき『遊星からの物体X('82)』同等の効果を得るべくSFXはCGIに頼らず、ストップモーション、ミニチュアエフェクト、アニマトロニクスを駆使し撮影された。この為の費用はクラウドファインド"Kickstarter"上で公募し、'10年"ADI(Amalgamated Dynamics Inc)"に依頼された。監督によると、本作に登場するクリーチャーにCGIは一切使っていないとの事。
ただ上述の通り、これらの動きはどう観ても活力が無く、お世辞にも活き活きと生命感に満ちているとは云い難い故、激しく魅力に欠ける。本作の失敗の要因の一つと云えよう。全篇の展開がもたつき、だらだらと盛り上がらないのもこのクリーチャーの動きや魅了が足りない点が大きく関与しているのではないだろうか。
・脚本・監督・(共同)製作を兼ねるA.ギリスと(共同)製作のT.ウッドラフ・Jr.は嘗て『エイリアン('79)』の現場で働いていた。『遊星からの物体X('82)』にアンクレジットで参加し、その後『エイリアン2('86)』にて第59回アカデミー賞で視覚効果賞を受賞した大御所S.ウィンストンの死後、この二人がその仕事を引き継いだと云われている。
『エイリアン('79)』の宇宙船内テーブルに見られる玩具水飲み鳥(drinking bird)が本作に出ていたり、C.バルサモの“セイディ”がギアを取り出す工具箱に貼られたラベル“LV-426(『エイリアン('79)』にて発端となる惑星の名称)”は、これらに由来すると思われる。
・鑑賞日:2018年3月14日(水)