劇場公開日 2016年7月23日

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「この先生きのこるには」ロスト・バケーション かせさんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5この先生きのこるには

2023年7月3日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:TV地上波

怖い

興奮

『エスター』のジャウム・コレット=セラ監督が撮る、ソリッドシチュエーション・サメスリラー。

【ストーリー】
メキシコの美しい浜辺でサーフィンを楽しむ医学生の主人公ナンシー。
そこは同じくサーファーだった亡き母が、自分を妊娠中に訪れたという湾だった。
美しい海と抜けるような空、雄大な大自然の中、実家に置いてきた憂鬱の数々を振り切るように、波へと漕ぎだす。
人も少なく、サーファーにとって理想的なスポットで、思い切りライドを楽しんでいたが、あちこちを食い散らかされたマッコウクジラの死骸が浮かんでいるのに気づく。
その湾は、血に飢えたサメの回遊場所だったのだ。
逃げようとするナンシー、だがサメはその脚に食らいつき、海に引き摺り込もうとする。
その鼻ヅラを蹴り飛ばしてどうにか近くの岩場に上がるナンシーだが、サメは彼女を獲物と定め、その場から離れようとしない。
砂浜までのたった100メートルが、永遠のように遠く感じられる中、翼を傷つけられ同じ岩場で休息する一羽のウミネコを心の支えに、ナンシーはどうにか生残りの手段をさぐる。

サメを題材にした映画は多数あり、なかにはシチュエーション・スリラーも多く作られています。
スピルバーグの『ジョーズ』以降、アメリカ人にとってサメは、一つのジャンルと言えるほどの存在感を持ったギミックですね。
作りとしてはジョーズのスリラー+SAWの痛み描写と逃げ場のないサスペンス、この2点で構成されています。
上手いなと思ったのは、自然に肌を露出するサーフィンと組み合わせたこと。
最初に噛まれた脚の大きなV字の傷口を、ナンシー自らピアスで縫うシーンは、こちらまで悲鳴をあげそうな痛々しさ。
恐怖に駆られてただ泣くだけのヒロインではなく、ケガを増やしながらも、次々と手を尽くすタフさは好感が持てます。
主人公はこうでなきゃね。
サメの表現もリアルとフィクションギリギリを攻めていて、一人目のサーファー男子がパクーっといかれた時が一番恐怖をおぼえました。
ストーリーは単純ながら、構成を凝ることでミステリ風に仕立ててあり、ナンシーが無事に生還できたかどうかへの興味をそそります。

これから夏だもん、海に行きたいなあ、でも遠いなあと逡巡している方、今年は忙しくて諦めている方、この映画をみれば、海岸の美しさと生々しい生命の尊さを感じさせられ、ロストぎみのバケーションも味あわせてくれるでしょう。

かせさん