淵に立つのレビュー・感想・評価
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悪魔的な八坂が魅力
この映画の見どころは個人的には八坂が出てくる前半である。
清潔な白いシャツを第1ボタンまでキッチリかけて、すらりと姿勢が良く敬語を使う。
それでいて不穏な空気をまとってミステリアスな正体不明の男。
本性をなかなか見せない八坂だが突然、遊びに行った川辺で利雄にドスの効いたオドシをして露呈していく。
偽りの白いシャツは薄汚れていき、ついには「原罪」のように真っ赤なシャツを露わにするシーンは本当にシビレます。視覚的効果バツグン!
魅力的な八坂に比べて、周辺の夫婦二人は冴えない。
悪魔のように魅力的な八坂にヨロヨロする奥さん、教会に通う敬虔なプロテスタントのわりにちょっとチョロすぎじゃないですか?
いつも長い髪をおろして、旦那とも上手くいってない感じで欲求不満だったのかな。
簡単に八坂に唇を許してイチャイチャ。それなのにいざとなると小娘のような拒絶。
旦那の利雄にいたっては、八坂じゃないけど「本当に小せえ男」で、娘がああなったのも自分たちの贖罪のような言い草。
妻に向かって「八坂とできていただろう」とか
娘の事件があってから本当の家族になったとか言う、娘の介護は妻任せの手前勝手な小せえ男。
なかなか本心を見せない八坂だが、奥さんに打ち明けた八坂ルールの罪の話し。川辺で利雄にぶつけた不満は真実だろう。
罪深いのは八坂だけでなく、殺人の刑に服することもなく身勝手な言葉を吐く、利雄も同等だと思う。
八坂を探しても意味がない。利雄は初めから殺人(幇助)の罪を償わなければ終わらないからだ。
その罪の償いは二人の子供たちの犠牲で終わったのだ。
(八坂の息子もホタルも死んだのではないかと解釈している)
淵に立つ
主人公の昔の友人が刑務所から出所して帰ってくるところから物語は始まる。彼が帰ってきたことによって狂っていく家族の話。 この映画には色々な場面に隠された意味があると思う。何気ない登場人物の会話も、後から考えると、もしかしたらこういうことだったのかもしれないと考えさせられるシーンが多い。とても深い映画だった。
過去を知る旧友が現れ、人生が変わっていく
まずは一言浅野忠信の不気味な存在感に感服。 白いワイシャツを1番上のボタンまで止めているだけであの律儀さと不気味な感情を共存させるのは凄いと思った。その朝のが1度赤いTシャツを着ているだけでこんなに恐怖を感じさせるのもすごい。 恥ずかしながら筒井真理子さんと言う女優さん初めて見たけどファンになってしまった。控えめな色気、ちょっと疲れた感じが出ているところが非常にリアルに感じた。 ストーリーの方では服役した人のその後の人生やまた家族の罪を誰が背負うのかと言ったテーマが非常に重く感じられた。 展開は違うが東野圭吾の手紙なんかも思い出される作品だった。
純粋無垢
人が大きな不幸に見舞われた時に思う罪と罰。あの時に罪を犯したから、罰となって返ってきたのではないか。もしかするとバチがあたったのではないか。
約束を守ることを命や法律よりも大切にしていたという八坂は、ある意味「純粋無垢」の象徴なのかと思いました。真白な出で立ちで現れたのも「純粋無垢」を表しているのかと。
鈴岡が無意識下で感じていた「純粋無垢」な存在に対する「罪」の意識が、八坂という姿になって「罰」として現れ、蛍という「純粋無垢」な存在を傷つける。戒めが薄れた現代社会に対する寓話の様な作品でした。
筒井真理子の8年経過の変わり様が凄い
3週間で章江の見た目をがらりと変えたとは驚き。 1時間で驚きの展開をみせたと思ったら、息子が絡んでくるとは。 娘を持つ親がみるのはキツそう。 黒沢清っぽいホラーなのかと思ったら違うかった。 脚本も担当している監督によると、家族とは不条理だと。 オルガンからのエンディング曲がきれい。 河原のロケ地は吉野梅郷 宗教の関わり方にはサル型とネコ型と2通りある。っていうのは特に伏線ではなかった。
どっちがいいか
八坂の不気味さは秀逸。罪を償って友達を恨むのと、罪を隠して家庭を築き、その幸せを壊されるのと、どちらがいいか。どっちにしろその子供は関係ないのに!八坂は息子の存在を認識していたのだろうか。その他のキャストもものすごーく良かった。
どうにもならないもの、、、
エゴを正面から見据えて描ききった傑作。 出演している方すべて隙がなかったです。 「こころ」(市川崑監督)も同じテーマを描いてたけど、本作品は露骨だした。その分ゾッとしました。怖かったです。 あがいてもどうするこもできない。 突き詰めて考えるとああなってしまうのです、、、、、。 くれぐれも御用心を!!!
面白くなかった
不気味さ、筒井真理子さんをはじめ、俳優陣の秀逸な演技は素晴らしかった。
だけどなぁ…監督が男性だからなのか?
非現実的なんだよ設定が。
年頃に差し掛かるお嬢さんがいる家庭で、父親自らが無防備に住み込みで仕事なんてさせるか?とか、そのお嬢さんが完全に年頃になり、ましてや自分の意思を伝えられず身体にも障害があるのに、部屋で同じく年頃の男と2人きりにするか?とか、自宅で仕事する夫がいて、家の中で浮気するかよ、とかね。
あの夫婦の思慮が足らずアホすぎるせいで、ストーリーがリアリティに欠けていて、恐怖より圧倒的な不快感と苛立ちに支配されてしまった。
町工場を経営する夫婦とそこに同居することになった男。 11年前に殺...
町工場を経営する夫婦とそこに同居することになった男。 11年前に殺人を犯し服役した男は共犯者については一切話さず、それに怯える夫。 8年後に現れた若者は男の息子で、そこから少しずつ動き出してゆく。 夫婦の娘に障害を負ってから潔癖症になり、それが恐怖感をさらにあおる。筒井真理子の娘を思いながらも、恨み悲しみ絶望が見え隠れする演技に圧倒された。 最後のシーンで、夫がホントに誰を大切に思っているのかが露呈する。若者のその後はどうっだったのだろうと想像させるところは監督の手腕であろう。
ホラー映画である
厭な結末だと思った。決して驚きのあるものではないが、「家族」というのを、これほど否定したというか、あからさまに問題を張り付けてそのままにしておく・・みたいな、「希望の無さ」には、強い憂鬱感が沈殿する。 そして、この家族が決して特別なものではなく、ちょっとした仕草などは、もはや我々と同質であることが提示されているので、恐怖すら感じるのだ。 また、核心の「事件」については、具体的な描写が皆無であり、これについては観客にゆだねられているところももどかしい。 浅野忠信の装われた「白」の下に隠れる「赤」、筒井真理子が娘に着せる「赤」、筒井が見る「白い」シーツから覗かれる浅野の幻影などは、ホラーの領域に達しており、何かハネケの映画を観たような既視感に襲われた。
予想もつかなかった。
予告を見た感じで、浅野忠信が家族に侵食して壊して行く話やろと思っていたら、とんでもなく次に何が起こるのか予想も出来ずあっという間の2時間だった。 浅野忠信の存在感はやっぱり凄くて、高校生の頃に見てた若い頃の浅野忠信を思い出した。ただカッコ良いだけでなくて、怖さと掴み所のない感じ。二面性がある役をやると流石だなと思った。 川で急に本性を出すところも怖かったけど、白い繋ぎを脱いで赤Tシャツになるだけで、こんなにゾッとするか?とその演出にも驚いた。 だけど、一番の驚きというか、もはや畏怖?筒井真理子さんの8年に女優魂を見た。 幸せな時の方が家族のバランスが悪く、事件後に家族がまとまっているのが不思議だけどリアリティがあって面白かった。 一つだけ、何故あそこで終わるのだろうと言う疑問がまだ解決出来ずにいる。
罪の無い子供たちに救いの手を、罪深い親たちに赦しを
昨年公開された邦画の中でも特に高い評価を得た一作。
難解で見る者に考えも感じ方も委ね、決して万人受けする作品ではない。
結構覚悟して見たが、全てを理解出来たかとは別に、なかなかにじっくりと見応えがあった。
深田晃司監督の作品は恥ずかしながら本作が初めての鑑賞になるが、その深淵な語り口は見事だ。
小さな町工場を営む鈴岡家。幸せな家庭とは程遠いが、平淡で穏やかな生活。
ある日、父・利雄の旧友という八坂が住み込みで働く事になる。
突然の事に妻・章江と娘・蛍は困惑…。
八坂役の浅野忠信が登場しただけで何処か危険な雰囲気を感じる。
真っ白なシャツ。
腰低く、丁寧な言葉遣い。
実は八坂は前科者。
それを告白し、今は更正して誠実に生きる八坂に、蛍はオルガンを教えてくれる優しいおじさんと慕い、章江は親しみ以上の感情を抱く。
が…
皆で行った川遊びで、本心か冗談か、利雄に言い放った暴言。
別のあるシーンで、脱いだ作業着の下の真っ赤なシャツ。
八坂の中の何かの箍が外れた。
忌まわしい事件を起こして、八坂は姿を消す…。
いきなりだがここで、ドン引くくらいの自分なりの解釈を。
公式サイトやWikipediaなどでもそう説明されてるので、これは絶対間違ってる解釈だが、
八坂は本当にこの家族を破滅させたのか…?
内に秘めた欲と狂気でこの家族に一生消えない暗い傷痕を残した事はまず確か。
だが、しかし…、解せなかった点が二つ。
お互い邪な感情を抱いた章江と八坂。が、土壇場になって章江は八坂を拒絶。
この時章江はかなり強く突き放したのにも関わらず、八坂は「このクソアマ!」なんて言って(幼稚な発想でスマン…)殴るなどしなかった。
その抑えきれない衝動を蛍に向けた事になっているが…
蛍を怪我させたのは八坂だったのだろうか。
状況やその時の彼の感情から見ればまず間違いない。
が、ひょっとしたら怪我した蛍の傍にただ佇んでいただけかもしれない。
八坂が蛍に乱暴したというシーンは描かれない。それを思わせる“後の”シーンがあっただけで、勝手に忌まわしい何かがあったと思い込んでるだけかもしれない。
一方的に八坂を拒絶し、憎み、自分たちで勝手に苦しみと悲しみの泥沼へ…。
…と、まあ、これは本当に愚かで馬鹿な自分の解釈なので、ご勘弁を。
8年後。
蛍は事件の後遺症で車椅子の障害者に。
章江は蛍の介護に追われ、異常な潔癖症に。
利雄は探偵を雇い八坂を探していたが、何の手掛かりも掴めず。
もはや家族とは呼べないこの家族に、従業員として働く青年・孝司の存在が、静かな荒波を立てる…。
孝司はあの忌まわしい八坂の息子。
が、生まれて一度も父に会った事は無く、父に愛情と呼べる感情は抱いていないが、今ここで働いているのは、ちょっと父を知りたいという興味本意から。
彼は潔白だ。
彼の告白を機に、利雄と章江の心の闇があぶり出される…。
八坂とは共犯者であった事を告白、妻が八坂とデキていた事も知っていた利雄。今の蛍は自分と妻への罰だと言う。
昔聖母の如く迷える八坂に救いの手を差し伸ばしたのに、罪深い八坂に触れたせいで穢れ、その穢れた手の汚れを落とそうと必死の章江。終盤八坂と思われる男の居場所が分かり、孝司を同行させたのは、八坂の目の前で孝司を殺す為…。
二人共人の親なのに、何故こんな事が言える?
八坂は忌まわしいが、この二人こそ罪深い。
「俺、殺されてもいいッスよ」
子供に親の罪は無い。
子供にこんな事を言わせるな。
章江は蛍と共に終わらせようとする。
子供を道添にするな。
“人違い”は滑稽な迷走。
迷い、疲れ果て、行き着き足ったのは、絶望の淵。
最後の最後、罪深い親に一筋の赦しが。
どうか、子供に救いを…。
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