「コメディサスペンスを上手く作るのは難しい」疾風ロンド りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
コメディサスペンスを上手く作るのは難しい
東野圭吾原作、阿部寛主演といえば『新参者』をはじめとする「加賀恭一郎シリーズ」だろうが、あちらの作品のテイストは、まぁ、ない。なにせ惹句は「衝撃」ならぬ「笑撃サスペンス」だからね。
偶然からつくりだされレベル4の超危険な細菌が医科学研究所が盗み出され、犯人から3億円の身代金要求があった。
レベル4の危険細菌を不法に所持していたことを知られたくない研究所側は、犯人から送られてきた画像をもとに、細菌の隠し場所を突き止めようとする。
その役割を与えられたのは、中間管理職研究員・栗林(阿部寛)。
隠し場所は、野沢温泉スキー場のどこか・・・
というハナシは、いわゆる「マクガフィン」を巡るサスペンス。
ヒッチコック監督がスパイスリラーで好んで使った技。
どんなものでも構わないのだが、善玉・悪漢の双方が争奪を繰り広げるための「ある品物」が、マクガフィン。
これは、できればあまり意味がないものの方がいい。
無意味であればあるほど、ハラハラ度とその間のコミックリリーフが上手くいくからだ。
まぁ、上手くいくのは、監督がヒッチコックだからかもしれないが。
で、今回は、超危険な細菌兵器。
うーむ、ちょっとシリアスに傾き気味かも。
これでは、笑いが上滑りしてしまう。
ま、狙いは、シリアスになればなるほど人間は滑稽になって笑いを誘う、というところなのかもしれませんが、それにしては少々テンションが低すぎる。
サスペンスが盛り上がらないのは、早々に犯人が死亡してしまい、マクガフィンの争奪戦になっていないため。
途中までは、犯人側がどうなっているのかわからずにハラハラさせるぐらいはしてほしかったところ。
その上、主役の栗林は前半の早い段階で行動できない状況になってしまう。
アクションシーンは若手に任せた、いうことなんだろうが、うーむ、これも減点。
ただし、雪上アクションは簡便な機器で撮影したにしては、なかなかスリリング。
事件解決後のエピローグも長いし、栗林親子の確執と和解は余計。
さすがにコメディタッチのサスペンスを上手く作るのは難しい。