「誤報の顛末」造られた殺人 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
誤報の顛末
あらすじは韓国お馴染み絶体絶命サスペンスだが、意外やブラックコメディ・タッチ。
となるとその系統の秀逸作『最後まで行く』みたいなのを期待。
仕事でミスを問われ、プライベートでは妊娠中の妻と離婚の危機。にっちもさっちもいかないTV局の記者。
そんな時、殺人事件の容疑者の情報を掴む。情報提供者の案内で容疑者の家に忍び込み、殺人の経過を記したと思われるメモを手に入れる。
スクープとして報道。ところが! それはただの小説の一説である事が判明。
後の祭り。上司からは続報を求められ、警察は居もしない犯人を追う。
焦った記者は犯人のフリして脅迫状を。それが火に油を注ぐ。報道や操作は加熱していくばかり…。
そしたら模倣した殺人事件が本当に起こり…。
ろくに裏も取らず報道するTV局もバカ。
調べりゃすぐ分かりそうな事なのに踊らされる警察もバカ。
主人公は愚か。
真犯人はサイコ。
誇張した皮肉や風刺が込められているんだろうけど、もしこれがリアルだったら、ヤベーぞ韓国…。
TV局長の言葉。真実なんてどうでもいい。視聴者が見たいのが真実。
これだって言いたい事は分かるんだけど…。オメーらに言われたくねぇ!
オチも賛否両論。
記者、真犯人、容疑者と間違えられた男。
顔にフードを被せられた間違えられた男を真犯人が殺そうとする。止めに入る記者。
記者と真犯人が揉み合い、真犯人を殺す。
その時フードが外れ、間違えられた男が見たのは…。
警察に救出された間違えられた男は、現場から逃げた記者を犯人と思い、殺された真犯人を自分を助けようとしてくれた恩人と思い…。
あの人は命を犠牲にして助けてくれたんだ。世間は英雄扱い。
唯一真実を知る記者。違う。あいつが真犯人なんだ!
それを訴えたらそもそもの自分の誤報が発覚してしまう。
誤報も真実も口をつぐんだまま…。
主人公の愚罪が明かされないのが人によってはすっきりしないかもだが、ウディ・アレンの『マッチポイント』を彷彿。これも痛烈な皮肉。
しかし、罰は下された。
ヨリを戻した妻のお腹の子供の本当の父親は…。
知るのは自分だけ。口をつぐんだまま。