「.」ハードコア 瀬雨伊府 琴さんの映画レビュー(感想・評価)
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自宅にて鑑賞。ロシアと米の合作でBGMやSEの入ったPOV。アクション・シューティング・アドベンチャー・ゲームをその儘実写化した様な一作で、倫理観や生理的な嫌悪感が吹き飛ぶ程の圧倒的なバイオレンスと人体破壊・人体欠損のオンパレード。これでもかと畳み掛ける様な殺戮シーンにサイキック系も登場して、何度も写し出される惨殺による亡骸の山々。至ってシンプルなストーリーだが、圧倒的な描写で最後迄、厭きさせず魅せる。先ずはイントロ部のタイトルバックを観て不愉快に感じるなら、その先へは進まない方が身の為。85/100点。
・グロい乍らも諄くなく、上品にさえ思えるのは作り手のセンスによる。CGI的な違和感を憶えないアクションシーンも豊富で、どの様にして撮ったか判らないカットも多い。意図的にベタっぽくしたと思われるBGMの使い方も佳い。ただラジカルが故、一定層には拒否反応を示されるの必至だが、本作が愉しめない方々には少々不憫さを感じてしまう。常日頃、POV等の画面を観て、酔っちゃうと云うヤワな方々も手を出さない方が良い。
・そもそもロシアのロックバンド"バイティング・エルボウズ"のPV『Bad Motherfucker』及び『The Stampede (Insane Office Escape)』が(共同)プロデューサーT.ベクマンベトフの眼に留まり、製作が開始され、ポストプロダクション中に資金が尽きてしまった為、クラウドファウンディングにて製作費を集め、完成に漕ぎ着けた。オープンソースのソフトウエア"Blender"が殆ど全ての視覚効果を担った。
・撮影はほぼ全てのシーンを、スタントマンやカメラマンの頭に固定したカメラ"GoPro Hero3 Black Edition"にて行った。スタントには監督やカメラオペレーターに編集を兼ねるS.ヴァルヤエフも参加したが、カメラの重みに加えハードなアクションでS.ヴァルヤエフは首を痛めたと云う。スタントに携わったのは、この二人に加え十人以上に上る(スタントとして八名がクレジットされている)が、幸いな事に一人が歯を失った事と首を痛めた数人を除き、大きな事故は起こらなかった。
・本篇中、殺された者を含め、写し出された死者の数は約211体とカウントされている。亦、途中アジトで戦った後、バイクで逃げる女王が二人登場するが、この内ポニーテイルの“カティア”を演じたダーシャ・チャルーシャ("Dasha"とクレジットされた"Darya Charusha")が音楽を担当した。
・スタッフロール内で"special thanks"として、S.L.ジャクソン、J.レト、N.ブロンカンプ監督等を含めた13人が挙げられている。今現在、正式なアナウンスは無いが、このスタッフロール内でS.コプリー演じる“ジミー”の声で続篇を示唆する音声が入っている。"STX entertainment"から発売された『2016 ultimate fan edition』に同梱されたコミックス版には、続篇が収録されている。
・鑑賞日:2017年6月2日(金)